研究課題/領域番号 |
20K11657
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
及川 佐枝子 (多田佐枝子) 椙山女学園大学, 生活科学部, 准教授 (90610585)
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研究分担者 |
保田 倫子 椙山女学園大学, 生活科学部, 講師 (00707036)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 豆味噌 / 生活習慣病 / 酸化ストレス / 炎症反応 |
研究実績の概要 |
味噌は抗酸化作用を有することから、がんや生活習慣病、老化のリスクを下げることが期待されている。本研究では味噌のなかでも特に強い抗酸化作用を有する豆味噌について、抗酸化作用、さらに抗炎症作用について検討を行う。本年度は、(1)若年女性を対象とした豆味噌摂取による尿中の酸化ストレスレベル低減効果、(2)豆味噌抽出物によるマクロファージ様細胞に対する抗酸化作用について、検討を行った。 インフォームドコンセントが得られた健常若年女性(女子大学生、18~19歳、36名)を対象とし、2週間の味噌摂取による尿中酸化ストレスレベルの変化を解析した。本年度は、前期に1回、後期に1回の計2回、試験を実施した。1期(前期)では対象者をランダムに豆味噌摂取群と非摂取群の2群に分け、2期(後期)では、対象者をランダムに豆味噌摂取群、米味噌摂取群、非摂取群の3グループに分けた。味噌は味噌汁として昼食に摂取することとし、摂取前、摂取後に採尿を行い、尿中酸化ストレスレベルの指標として8-OHdGを測定した。その結果、豆味噌摂取群、米味噌摂取群では、味噌摂取前後で酸化ストレスレベルの有意な変化は認められなかったが、豆味噌摂取群では、非摂取群、米味噌摂取群に比べて減少する傾向が認められた。また、これまで同様に実施した3年間のデータをまとめたところ、豆味噌摂取群では摂取後に有意に酸化ストレスレベルの低下が認められた。一方、非摂取群、米味噌摂取群では認められなかった。 また、マクロファージ様細胞を用いた味噌抽出物による酸化ストレスの低減効果の検討では、豆味噌・米味噌抽出物を、酸化ストレスを誘導したヒトマクロファージ様THP-1に投与したところ、酸化ストレスレベルの変化については安定した結果が得られなかった。以前の結果の再現性も得られなかったことから、今後、安定した味噌の抽出方法を検討する必要があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に引き続き、コロナ禍により被験者を集めて試験を実施する事が難しく、若年女性を対象とした研究では、試験の回数を減らして実施した。しかし、昨年度よりは人数を集めて実施する事が出来たため、これまで実施した試験の結果をまとめて、ある程度の結論を導き出すことが出来た。今後、考察を進めて行く予定である。 培養細胞を用いる実験については、前半の時期にコロナ禍の影響で施設を使用する事が出来なくなったことから、実験の開始時期の遅れにより予定通り研究が進まなかった。また、時間的に十分な追試もできなかったことから、やや遅れているという評価になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究について、本年度安定した結果が得られなかった味噌抽出物による抗酸化・抗炎症作用について検討を進めて行く予定である。まず、味噌抽出物の安定した調製方法を確立する。味噌抽出物の抗酸化作用については、ヒトマクロファージ様THP-1細胞を用いて、これまでの実験結果の再現性を確認する。さらに、各種味噌による抗炎症作用を解析するために、肥満細胞様3T3-L1とRAW264を共培養することによる炎症反応誘導のモデルを使用し、味噌抽出物投与による抗炎症効果を検討する。 また、若年女性を対象とする各種味噌摂取による尿中の炎症レベルの低減効果については、尿中CRPを測定する事で検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は昨年度に引き続きコロナ禍が続いていたため、培養細胞を用いる研究については、研究開始の遅れや追試のための時間確保の難しさなどが発生し、予定していた研究のための試薬や器具など購入するための予算を使用する事が出来なかった。また、若年女性を対象とした研究について、被験者を集め試験を実施する期間が短くなり、さらに試験の回数も予定より少なくなったことから、こちらについても試験に使用する器具や試薬の予算を予定通り使う事が出来なかった。以上の理由で次年度使用額が生じた。 次年度には、本年度実施する予定であった脂肪細胞・マクロファージ共培養系を用いた抗炎症作用の解明を行っていく予定である。そのために、器具や試薬を購入する予定である。
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