本研究は、分泌型糖タンパク質CREG1が臓器間ネットワークを担う内分泌因子として広く全身性に働いていることを明らかにすることを目的とする。令和5年までの研究により、各組織におけるCREG1の発現条件や、臓器特異的なCREG1の抑制が、標的臓器以外のCREG1やFGF21の発現を誘導することを明らかにした。また、CREG1の発現制御機構について、オートファジー誘導がCREG1の発現誘導因子の一つであることを明らかとし、CREG1の発現を上昇させる植物由来成分を発見した。令和5年度は、臓器間ネットワークを担う内分泌因子としてのCREG1の作用解明を中心とした検討を行った。CREG1は褐色脂肪化(ベージュ化)や脂肪肝の発症に関与していることから、褐色脂肪組織(BAT)由来CREG1の脂肪肝への影響、及び肝臓由来CREG1のベージュ化への影響を検討した。マウスを高脂肪食で2ヶ月間飼育後、BAT特異的にCREG1を抑制し、さらに2ヶ月間高脂肪食で飼育し脂肪肝形成に与える影響を検討した。その結果、肝重量、肝中脂質量には影響は見られず、BAT由来のCREG1は脂肪肝の形成には影響しないと考えられた。一方、肝臓特異的にCREG1を抑制したマウスを寒冷環境下で1週間飼育し解析を行った。その結果、BATや鼠径部脂肪組織のUCP1発現量は変化しなかったものの、副精巣周囲脂肪組織のUCP1発現量は30%にまで有意に減少した。従って、肝臓由来CREG1は、内分泌因子として働き寒冷時における副精巣周囲脂肪組織のベージュ化に関与することが示唆された。
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