近年、日本では、低出生体重児の頻度が約10%と増加傾向にある。またDevelopmental Origins of Health and Disease (DOHaD) 説では低出生体重児は2型糖尿病をはじめ、様々な生活習慣病の発症リスクを高めるとされている。これらのことから、将来、生活習慣病の増加が危惧されている。しかし、母体栄養と、出生体重を含む児にもたらす影響との関連の分子的機序は、ほとんど明らかでない。これまでに、申請者らは母体の血中ビタミンD (VD) と胎盤のリン酸化AMP kinase (AMPK) 量、リン酸化AMPK量と児の出生体重、胎盤重量とに、それぞれ正の相関関係があることを見出している。また、児の出生体重、胎盤重量が異なる胎盤を用いて、網羅的遺伝子発現解析を行っており、胎盤重量、出生体重が高いと胎盤のSPXの発現量が増加し、胎盤重量、出生体重が低いとHIF3Aの発現量が増加することなど、特徴的な遺伝子発現パターンを見出していた。さらに、胎盤のモデル細胞のヒト絨毛ガン細胞株BeWoにAMPK活性化剤のAICAR処理により、SPXの発現量が増大し、HIF3A、One carbon metabolism (OCM) 関連遺伝子の発現量が減少することを見出した。 今回、我々はDNAメチル化の責任酵素であるDNMT familyの発現がAICAR処理により、どのように変動するか、BeWoを用いて検討した。その結果、AICAR処理により、DNMT familyの発現が減少した。さらに、胎盤組織を用いて、DNMT familyとOCM関連遺伝子の発現量を検討した。その結果、いくつかの遺伝子の発現量と胎盤重量、出生体重とで、有意な相関関係を見出した。
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