研究課題/領域番号 |
20K11664
|
研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
川上 恭司郎 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90589227)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 細胞外小胞 / バイオマーカー / 認知機能低下 / 長期縦断研究 |
研究実績の概要 |
認知機能の低下は超高齢社会の我が国では重要な問題の一つである。認知機能低下の早期のバイオマーカー開発には様々な取り組みが行われているが、実用化には至ってはいない。その原因として、横断研究における個人差が挙げられる。そこで、本研究では同一人物を長期追跡した縦断研究の検体を用い、個人差を抑えた探索研究を行う。具体的には、細胞から体液中に放出され、由来細胞の成分を内包する細胞外小胞を血漿から単離した後にプロテオーム解析を行い、従来の血漿全体の解析では見えなかった新規バイオマーカーの発見を目指す。さらに、細胞外小胞の機能解析として、候補タンパク質が病態に及ぼす影響を、培養細胞を用いた実験系で検討する。 本年度は以下のことを行った。 1)解析対象の選定:長期縦断研究SONICより70歳代の初回、2回目(3年後)、3回目(6年後)の調査で、認知機能検査であるMoCA-J(Japanese version of Montreal Cognitive Assessment)スコアが連続的に低下した参加者を選定し、「認知機能低下群」とした。さらに、MoCA-Jスコアが低下しなかった参加者から教育歴等を考慮して「認知機能維持群」を選定した。その結果、認知機能低下群が14例、認知機能維持群が12例選定された。今後この検体を用いて検討を行っていく。 2)細胞外小胞の精製の検討:現在まで細胞外小胞のホスファチジルセリン(PS)アフィニティ精製法による検討は主に血清を使用して行ってきたが、SONICで採取されているのは血漿であるため、血漿を用いても同様に細胞外小胞を精製することが可能であることを市販の血漿を用いて確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、長期縦断研究SONICの70歳代の参加者の中から、解析対象となる認知機能低下群と、認知機能維持群を選定した。また、血漿からのPSアフィニティ法を用いた高純度細胞外小胞の精製法の検討は最終段階に入っている。以上のことより、おおむね順調に進展していると考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
選定したSONICの検体を用いて、PSアフィニティ法により細胞外小胞を精製し、トリプシン消化後、ナノLC-ESI-質量分析システムを用いて定量プロテオーム解析を行う。定量解析により、認知機能低下群で発現レベルが変化するタンパク質を同定し、候補タンパク質を選出する。その後、候補タンパク質について臨床的有用性の検討をするため、サンドイッチELISAにより検出するシステムを構築し、SONIC検体の中で認知機能の高い群、低い群の検体を用いて横断的に測定する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
細胞外小胞に関する研究は本研究以外にも行っており、他の研究の試薬と共通するものが多く、使用期限を考慮して既に購入済みの試薬を先に使用するなど、予定の試薬の購入を遅らせる事態が発生したが、基金である利点を活用し、翌年分にスライドすることが可能であったため商品の重複購入を避けることにした。これから細胞培養、超遠心、プロテオーム解析、ウエスタンブロット解析、ELISA、組織染色、抗体など研究計画に基づき無駄なく執行していく予定である。
|