研究課題
認知機能の低下は超高齢社会の我が国では重要な問題の一つである。認知機能低下の早期のバイオマーカー開発には様々な取り組みが行われているが、実用化には至ってはいない。その原因として、横断研究における個人差が挙げられる。そこで、本研究では同一人物を長期追跡した縦断研究の検体を用い、個人差を抑えた探索研究を行う。具体的には、細胞から体液中に放出され、由来細胞の成分を内包する細胞外小胞(EV: extracellular vesicle)を血漿から単離した後にプロテオーム解析を行い、従来の血漿全体の解析では見えなかった新規バイオマーカーの発見を目指す。前年度までに、長期縦断研究SONICより70歳代の初回、2回目(3年後)、3回目(6年後)の調査で、認知機能検査であるMoCA-J(Japanese version of Montreal Cognitive Assessment)スコアが連続的に低下した参加者を選定した。また、血漿検体における細胞外小胞精製法についてホスファチジルセリン(PS)アフィニティ精製法、EVマーカーに対する抗体による精製法、サイズ排除クロマトグラフィーなどを検討し、精製法の最適化を行ってきた。最終年度は前年度までの精製方法の検討結果からEVマーカーに対する抗体による精製法を選択し、選定した長期縦断研究SONICの認知機能低下群の70歳と76歳時点の検体からEVを精製し、プロテオーム解析を行った。その結果、737個のタンパク質が同定され、同一人物で6年後に変化するタンパク質として、21個が抽出されてきた。今後は認知機能が変化しない群との比較を行い、認知機能低下と関係性が強い可能性があるタンパク質を選抜し、多検体を使用した検証を行うことで、新規バイオマーカーの開発を目指していく。
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https://www.tmghig.jp/research/team/roukakikou/proteome/
https://tmig-proteome.org/