研究課題/領域番号 |
20K11666
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 顕 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (10723562)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 組合せ遷移 / 最適化遷移 / グラフアルゴリズム |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き本研究計画の2つの目標の内,1つ目の目標である「現実的な時間でより良い解を求めるアルゴリズムの開発」を中心に従事した.また,2つ目の「利便性の高いプログラムの実装と公開」にも従事した. 中でも大きな成果は,昨年より継続している彩色遷移問題の最適化遷移問題に関して,困難性容易性の両面から結果を得ることができた.具体的には,色数が少なくとも4で,入力グラフの縮退数が3の場合ですらNP困難,すなわち現実的な時間で解けそうにないほど難しい問題であることを示した.一方で,色数が3以下の場合や,入力グラフの縮退数が2以下の場合に動作する高速なアルゴリズムを開発した.これらの結果によって,色数と縮退数という2つの観点から本問題における困難性の境界を明らかにした.他にも,グラフクラスに基づく困難性の解析も行っており,平面グラフに対してNP困難である一方で,弦グラフやコグラフと呼ばれるグラフクラスに対しては線形時間アルゴリズムを与えた.これらの結果は既に「計算機と組合せ論に関する査読付き国際会議(COCOON 2021)」で口頭発表を行っており,またその際に提出した予稿は同国際会議より選抜論文として「情報数学と計算機科学に関する査読付き学術誌(IJCM:CST)」の特集号に招待され,現在査読中である. 他にも,全域木遷移問題に対して昨年から海外の研究者と行っていた,次数や直径を制限した際に問題の難しさがどう変わるかについての解析が終わり,この結果について「計算機科学の理論的側面に関する国際シンポジウム(STACS 2022)」で口頭発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 昨年の独立集合に加え,グラフ彩色の最適化遷移問題に対しても,大きな成果を得ることが出来た. 2. 得た成果に関して,国際会議での口頭発表や,学術雑誌への投稿等,順調にアウトプットできている. 3. 昨年に引き続き,国内外の研究者との交流を通して,様々な遷移問題に対して結果を得ることができた. 以上のことから,本研究計画はおおむね順調に進んでいると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度までで独立集合,グラフ彩色をはじめ,様々な問題に対する知見を得ることができた.最終年度では,本研究計画の最終目標である,より一般性の高い結果を目指して研究を進めていく. 既に多くの国際会議での発表や学術雑誌への投稿を行っているが,今後得られた結果も順次論文にまとめていく. また,本研究の2つ目の目標である「利便性の高いプログラムの実装」についても,ここまで得られた成果を基に,1つ目の目標と並行して進めていきたい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 新型コロナウイルス蔓延の影響で予定通りに旅費を使うことができなかったため. (使用計画) 旅費以外の予算については予定通りに執行していく.旅費については,新型コロナウイルスの影響が収束し次第,次年度分と合わせて有効に利用していく.
|