研究課題/領域番号 |
20K11668
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤原 祐一郎 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20756142)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 確率的組合せ論 / 符号理論 / グラフ理論 / センサーネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究課題の初年度においては,極値集合論や確率的組合せ論といった離散数学の情報科学への応用に重点をおいた.離散数学は情報科学の基盤となる数学として,近年様々な方面からの研究が活発に行われているが,本研究本年度においては,離散数学のグラフ理論的視点と,情報科学のアルゴリズム論的視点を組み合わせることで,構造が流動的であるネットワークを効率的に制御するための一般論の構築の重要性を提起し,この問題に対して,確率的組合せ論を応用した研究の方向性を提示した. 本研究で考察する流動的ネットワークはグラフ理論的数学構造であるため,研究対象そのものは非常に抽象化されているが,もちろん実社会で見られる様々な具体的ネットワークや,今後実現が望まれる高度な情報ネットワークなども包含する概念であり,近年その到来が注目されているIoT社会での移動体通信ネットワークなども含まれる.例えば,自動車や携帯電話,腕時計,さらには商品タグなどがお互いに通信しあう場合,高機能な情報機器の搭載は望めず,またネットワークの構造や参加機器が刻一刻と変わる中,一元的な中心管理制御機構の構築も現実的ではない.こういった場合に,瞬間的に刻々と変化するネットワークの全体を制御する仕組みを如何にして実現するかを,グラフ理論,極値集合論,確率的組合せ論,そしてアルゴリズム論を駆使して理論的考察を行うことが,本研究の主要な方向の一つである. 初年度においては,上述の問題に対して,グラフ理論にて古くから研究されてきた支配集合の概念を応用することを模索し,ネットワーク内のどの通信機器もごく近くのネットワーク状況しか知り得ない場合でも,即時に全体を制御するために必要な機器を中心制御することなく高速自動選定するアルゴリズムを提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄で概説した問題など,いくつかの興味深い研究対象に対して部分的研究成果が得られたほか,今後より深く考察すべき関連問題も多く発見されたため,当初の計画から逸脱することもなく,一定の成果があげられていると思われる.一方で,昨今の感染症拡大の煽りを受け,参加を予定していた国際会議の延期など,発表や討論の機会が多く失われたこともあり,研究計画段階からある程度見通せていた程度に収まってしまっているとも考えられるため,来年度には,良い意味での予期せぬ研究計画変更を願うものである.
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今後の研究の推進方策 |
これまで当初の研究計画から逸脱することもなく,また大きな研究計画の変更を迫られるような事態にはなっていないため,概ねこれまで通り,離散数学の情報科学への応用という視点を中心に,数学として興味深い成果を得ることも睨みつつ,符号理論やネットワーク,アルゴリズムといった分野に貢献することを次年度も目指す方針である.また,物理,数学,情報科学,そして電気電子工学の3分野の異なる価値観が交錯する領域である量子符号理論に関する研究は,研究計画段階から様々な研究者の視点を取り入れることの重要性を認識していたが,この点に関して,対面での研究討論の機会が次年度以降には増加すると思われるため,量子符号理論の研究を本研究2年目に活発化させることが適していると考える.
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