研究課題/領域番号 |
20K11671
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
伊藤 大雄 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50283487)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 定数時間アルゴリズム / 検査不可能性 / 折れ線の非交差埋め込み問題 |
研究実績の概要 |
本研究では研究代表者の提案している「劣線形時間パラダイム」を広く展開するための理論研究を行っている。2022年度の主な成果は以下の通りである。 (I) 定数・劣線形時間アルゴリズムをゲーム・パズルに拡張する研究を行っている。これまでいくつかの一般化ゲーム・パズルが定数時間検査可能であることを示してきたが、ボタン&シザーズが定数時間検査不可能だとの予想を立てて証明を試みている。そして盤面を一次元に限った問題については定数時間検査不可能であることに対する我々の構築した証明が不完全であることを見つけた。具体的には、既に定数時間検査不可能であることが証明されている文字列問題を帰着することで行っているが、帰着の際に想定外のボタン消去手順が存在することを見落としていた。現在その証明を修正中である。 (II) 離散幾何学上の問題に対していくつか成果を上げた。まずDNA計算などに応用を持つ、ある種の折れ線の非交差平面埋め込み問題がNP完全であることを証明した。これはErik Demaine (MIT)らとの共同研究であり、国際会議CCCG2022のプロシーディングスに掲載された。他に多面体の全ての面を通る測地路であるFGG路(Face-Guard Geodesic Path)という概念を提示し、それを持つ多面体の特徴づけを行った。具体的には任意の四面体にはFGG路が存在するが、正四面体以外の正多面体にはFGG路は存在しない事、三角柱にFGG路の存在する必要十分条件などを明らかにした。また、数字の配置が均衡しているn面体ダイスの問題などに関する研究も行い、それらを国際会議JCDCG^3 2022で発表し、論文を投稿した。現在査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一次元ボタン&シザーズに関する証明の誤りが見つかる事などもあり定数時間アルゴリズムの進展があまり無かった点は不満であるが、その一方で離散幾何学上の問題でいくつか成果を出すことが出来た。総合的に捉えると概ね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は劣線形時間アルゴリズムとしては複雑ネットワークに対する定数時間アルゴリズムや一般化したゲーム・パズルの定数時間アルゴリズム、あるいはオークションや安定結婚問題等への劣線形時間アルゴリズムの適用など様々な可能性に挑みたい。線形・多項式時間アルゴリズムとしては折り紙や広義K_3辺被覆問題の拡張に挑む。他に離散幾何学上の新たな問題や未解決問題などにも挑む。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により海外出張や招待講演が滞った分の予算が2020年度より3年分溜まっている。今年度より使用していく予定であるが、3年分の蓄積を無理して今年度1年で使い切ることは考えていない。
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