研究課題/領域番号 |
20K11673
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
浅野 哲夫 金沢大学, その他部局等, その他 (90113133)
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研究分担者 |
上原 隆平 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00256471)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 輸送問題 / グラフ / パス / 森 / NP完全 / 多項式時間 |
研究実績の概要 |
本研究では新しい形式の輸送問題について研究を進めた.入力は節点に重みのついたグラフである.重みが正ならば,それだけの量の商品がその節点に蓄えられていることを表し,負ならば,その量だけ商品が不足していることを表している.各節点に1台の車両を用意する場合と,各辺に1台の車両を用意する場合の2通りを考えたとき,線形計画法により各辺に1台の車両を用意すれば,すべての不足分を解消する1ラウンドの輸送が存在するかどうかを多項式時間で判定することができる.しかも,それを各節点に1台の車両による輸送に変換する方式も存在することが分かった. 商品が多数個存在する場合について,各節点に1台の車両を使った輸送問題についても考察した.グラフが単純なパスからなる場合については線形計画法ですべての不足分を解消する1ラウンドの輸送が存在するかどうかが判定できるが,実際には時間がかかるのが難点である.線形計画法を使わない方法の開発に務めた結果,幅優先探索法に基づく効率のよいアルゴリズムの開発に成功した.この方法をさらにグラフが疑似木と呼ばれる,各連結成分が高々1個のサイクルしか含まないようなグラフに対しても適用できるように拡張した.さらに,各連結成分に高々ある定数個のサイクルしか含まないようなグラフに対しても拡張できることを示した. 今後は,すべての不足分を解消する1ラウンドの輸送が存在するかではなく,すべての不足分を解消するための最小回数のラウンドを求める問題や,1ラウンドの輸送で最大の不足分を最小化する問題についても考察する予定である.ここでも線形計画法は重要な道具であるが,線形計画法を用いない方法の開発にも力を注ぎたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請段階では,与えられたグラフの各節点に1台の車両を想定していたが,各辺に1台の車両を仮定すると問題が簡単になることが分かり,順調に研究が進んだ.しかも,各辺に1台の車両を使う方式での答を各節点に1台の車両を使う場合の解に置き換える方式も開発できたことが研究の進展に大いに役立った.
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今後の研究の推進方策 |
今年度までは,すべての不足分を解消する1ラウンドの輸送が存在するかどうかを判定する問題を考えた.今後は,さらにそれを発展させて,何ラウンドの輸送を行えばすべての不足分を解消することができるかを求める問題や,最大の不足分を最小化する1ラウンドの輸送を求める問題についても考察する予定である.いままでに考察した問題は線形計画法を用いれば多項式時間で解けていたが,線形計画法以外の有用な解法を見つけることができるかどうかが鍵となる.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で国際会議への出席と海外のみならず国内の研究者との共同研究もままならず,予定していた予算を消化することができなかった.海外出張についても可能な状況となりつつあるので,今年こそは研究仲間を訪問するとともに国際会議にも出席したい.
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