研究課題/領域番号 |
20K11677
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮崎 修一 京都大学, 学術情報メディアセンター, 准教授 (00303884)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 安定マッチング / アルゴリズム理論 / 計算複雑性 / NP困難性 / 近似アルゴリズム / 例題生成 / 希望リスト / 非交差マッチング |
研究実績の概要 |
異なる2つのグループがあり、各メンバーは他方のグループのメンバーに対する選好順序を持っている。このとき、この選好順序に基づいた「安定性」と呼ばれる性質を満たすマッチングを安定マッチングという。本研究の目的は、安定マッチングを実用に即して拡張し、それらのモデルに対する計算複雑性を明らかにすることである。本年度は以下の活動を行った。 (1) 希望リストに同順位と不完全性の両方を許したモデルでは、最大サイズの安定マッチングを求める問題はNP困難(最適解を求めることが困難)になることが知られており、そのため近似アルゴリズムが盛んに研究されている。本研究ではその性能を計算機実験により評価するための(例題、最適解)ペアを生成する手法について論じ、その限界を理論的に示した。本成果は情報処理学会論文誌 Journal of Information Processing に掲載された。 (2) 各メンバーが2次元平面上の2本の平行な直線上に並んでいるとき、どの2つの枝も交差しないようなマッチングを非交差マッチングと呼ぶ。RuangwisesとItohは国際会議 IWOCA 2019 において非交差安定マッチングの定義を2つ提唱し、その一方に対して存在判定のための多項式時間アルゴリズムを示した。また、最大サイズの安定マッチングを求める問題および、他方の定義における存在判定問題の計算複雑性を未解決問題として挙げた。本研究ではこれら両方に対して多項式時間アルゴリズムを与え、肯定的に解決した。また同順位の存在するモデルにも拡張し、それらの多項式時間可解性とNP困難性を示した。これらの結果は査読付き国際会議 IWOCA 2020 で発表した。 (3) 安定マッチングに関するこれまでの研究成果を産業界および一般に周知するため、京都大学第15回ICTイノベーション(オンライン開催)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、研究計画書の「テーマ1」に初年度から取り組むことになっていた。しかし、一定の試みはしたものの、本年度は論文として発表するまでの成果を得るには至らなかった。一方「研究実績の概要」の(2)で示した非交差安定マッチングは、2年目から取り組むことを計画していた。しかし本科研費が採択された時点である程度の準備ができていたため、本年度はこちらに優先的にエフォートを裂き、初年度に査読付き国際会議にて発表するところまで到達した。また、その内容が評価され特集号論文誌への招待も受けている。これらを総合して「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、国際会議で発表した非交差安定マッチング問題に対する成果のジャーナル化に取り組む。また、余力があればこのテーマを発展させて、更なる成果につなげたい。 また、他のトピックとして研究計画書に上げた「テーマ1」および「テーマ2」に取り組むが、次年度は「テーマ2」に優先的に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス流行の影響で国内外への出張を全く行わなかったため、旅費として予定していた研究費を使用しなかった。一部計画を変更して、オンライン打ち合わせのための機材購入等に充てたが、今年度の予算を全額は消費していない。 次年度以降コロナウィルスの感染状況が収束したら、出張費として使用したい。
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