研究課題/領域番号 |
20K11677
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
宮崎 修一 兵庫県立大学, 情報科学研究科, 教授 (00303884)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 安定マッチング / アルゴリズム理論 / 計算複雑性 / 近似アルゴリズム / 研修医配属 / 地域上限 / 定員下限 |
研究実績の概要 |
異なる2つのグループの各メンバーが他方のグループのメンバーに対する選好順序を持っているとき、この選好順序に基づいた「安定性」と呼ばれる性質を満たすマッチングを安定マッチングという。本研究の目的は、安定マッチングを実用に即して拡張し、それらのモデルに対する計算複雑性を明らかにすることである。本年度は以下の活動を行った。 (1) 病院の研修医配属問題において、各病院が定員下限を宣言するモデルはこれまでに複数研究されている。本研究では定員充足率を最大化する問題を定式化し、幾つかの場合に対してアルゴリズムの設計と解析、計算複雑性の結果を得、昨年度末に査読付き国際会議STACS 2022にて発表していた。本年度はこの継続として、希望リストが不完全(すなわち、他方のグループのメンバー全員を書かなくて良い)という一般化に対する研究を行い、同じくアルゴリズム設計や計算複雑性解析を行った。本結果は、査読付き国際会議SAGT 2022にて発表した。 (2) 研修医配属問題において医師の都市部集中を抑制するため、幾つかの病院をまとめた「地域」を定義し、各地域に上限を設定する問題が提案されており、この問題のNP完全性が最近示されていた。本研究では、希望リストの長さや地域のサイズなどをパラメータとして、問題がNP完全となる場合と多項式時間で解ける場合の境界を明らかにした。この結果は昨年度に国内の無審査研究会で発表していたが、本年度は査読付き国際会議COCOON 2022に採録され発表した。 (3) 安定マッチングに関するこれまでの研究成果を産業界および一般に周知するため、ひょうご講座2022、兵庫県立大学 知の交流シンポジウム2022、兵庫県立大学オープンキャンパス ミニ模擬授業、兵庫県立大学附属中学校中大連携授業での講演に、安定マッチングの話題を取り入れた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実施状況報告書の「今後の研究の推進方策」には、申請時のテーマ2を一般化するなどテーマ2に集中的に取り組む旨を書いていたが、上記「研究実績の概要」に書いた成果(1)は正にテーマ2の一般化である。また成果(2)はテーマ2からの派生問題である。これら2つの成果が、国際的に名の通った査読付き国際会議に採録されたことを受けて、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
上記した「テーマ2」に関する研究成果が順調に得られているため、今後もこのテーマに重点を置いて研究を進める。差しあたっては、今年度に得られた2件の国際会議の結果を論文誌に発表することを優先する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染予防のために出張を控えたことや、その影響で国内外の会議がハイブリッドで行なわれる機会が多くなり、現地に行く必要性が低くなったことにより、旅費を全く使用しなかったことが大きな理由である。 今後もオンラインにて研究発表を聴講する機会は残ると考えるが、スムーズな通信のためにはパソコンやタブレット端末の性能が重要である。したがって、次年度は最新スペックのノートパソコンやタブレット端末を複数台購入する予定である。また、単なる聴講はオンラインでも十分であるが、個別の研究打ち合わせは対面の方が効果が高い。2023年5月以降新型コロナウィルスの法的な扱いが大きく変わるため、次年度は徐々に出張を増やしていく予定であり、そのための旅費として使用する。 なお、本課題の研究期間は新型コロナウィルスの影響を大きく受け、共同研究者等との対面での議論が十分に行われなかったため、次年度の進捗を考慮しつつ、場合によっては1年間の研究期間延長も考慮したい。
|