研究課題/領域番号 |
20K11682
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
今井 桂子 中央大学, 理工学部, 教授 (70203289)
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研究分担者 |
森口 昌樹 中央大学, 理工学部, 准教授 (10525893)
今井 浩 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (80183010)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 計算幾何学 / 計算位相幾何学 / 動的環境 / トポロジカル量子計算 |
研究実績の概要 |
計算幾何学は幾何情報処理のアルゴリズムを開発し,それを計算量理論によって解析する分野であり,計算位相幾何学は幾何情報の持つ位相そのものを抽出することや位相幾何学的な不変量をコンピュータで計算するための手法を構築する分野として発展してきた.本研究では,動的環境における計算幾何学の問題を計算位相幾何学の問題として捉え直すことにより,これまで個別に対応してきた動的環境における計算幾何学の問題を統一的に扱えるようにすることを目指して研究を進めている. 昨年度に行った動的環境における計算幾何学や計算位相幾何学の問題の整理を基に今年度の研究を進めてきた.大規模な位相構造を持つ東京の地下鉄の路線図の描画はこれまであまり有効な手法が提案されていなかった.しかし,駅名も同時に自動配置することが可能な描画手法を提案し,これをまとめた研究を論文として公表した.ラベル配置問題においては,島の集合である島群に対するラベル配置問題に対して,拡大縮小を念頭においたラベル配置問題の解法を多くの計算幾何学の基本概念を利用することにより開発した.この手法に対して国土地理院地図を用いて計算機実験を行い,その有効性を確認した.提案した手法は島群に対してだけではなく,非連結な領域に対するラベル配置を可能にするものである.また,領域の境界に曲線を持つメッシュの張り合わせはこれまで難しかったが,既存手法を拡張し,平面の領域だけではなく,曲線を境界にもつ曲面メッシュにおいても張り合わせ可能なメッシュ生成手法を提案し,口頭発表で公表した.他にも量子計算に関する研究も行い,口頭発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の3つの課題に焦点を当てて研究を行ってきた.(a)動的環境における問題に対する計算幾何学アルゴリズムの開発,(b)位相量子計算パラダイムを用いて位相幾何学の各種不変量を計算する手法の構築,(c)動的環境に現れる大規模データを位相幾何学的に捉え、そこに現れる問題をトポロジカル量子計算的なアプローチを用いて解く手法の構築を目指し、計算幾何学・計算位相幾何学における応用の拡張. (a)については,各種のラベル配置問題に対するアルゴリズムを研究してきた.特に,非連結な領域に対するラベル配置問題に対してモデル化を行い,効率的なアルゴリズムを提案した.国土地理院の地図データにおいて島群に対して計算機実験を行い実用性の検証を行い,口頭発表によって公表した.(b)においては,位相構造を持つ実社会で重要な路線図の描画に関する研究をまとめ,論文として発表を行った.また,3次元曲面のメッシュ生成手法において,曲線境界を持つパラメトリック曲面上の張り合わせ可能な非等方性メッシュ生成手法を提案し,口頭発表によって公表した.(c)においては,これまで行ってきた調査をまとめたものをサーベイとして発表を行った.
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今後の研究の推進方策 |
動的環境における大量のデータを持つ路線図に対する略地図生成に関しては,高速道路の渋滞情報に関する研究を進める予定である.これまでの地下鉄路線図の描画手法を応用すると共に,渋滞情報に応じた変化に対応するためには動的な環境変化を考慮する必要もある.また,複数車線や通行方向などに対応できるように新しい手法も提案する予定である. 動的環境に現れる大規模データを位相幾何学的に捉え、そこに現れる問題をトポロジカル量子計算的なアプローチを用いて解く手法に関しては,萌芽的な側面が強いが,これまで行ってきた既存の研究の調査を進め,得られている研究成果を精査し,計算幾何学・計算位相幾何学,量子計算の融合を目指して研究を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究会や学会がオンラインで開催されたため,出張旅費がかからなかったことによって,次年度使用額が生じた.翌年分として請求した助成金と合わせて計算機実験のための環境整備や後継機種が販売された3Dプリンタの購入などを予定している.また,今年度は少しずつ出張も可能となると思われるので,旅費として使用する予定である.
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