研究課題/領域番号 |
20K11685
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
和田 幸一 法政大学, 理工学部, 教授 (90167198)
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研究分担者 |
DEFAGO Xavier 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (70333557)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 無記憶ロボット / LCMサイクル / ライト付きロボット / メモリ対通信 / 同期度 |
研究実績の概要 |
本研究は,ロボットが記憶できる能力,ロボット間の通信能力,ロボットを動作させる同期度がロボット群の計算能力に及ぼす影響を解明することを目的としている.ロボットに搭載するライトは自身も他のロボットも認識できるモデル(LUMI),自身のライトのみを認識するモデル(FSTA),他のロボットのみが認識できるモデル(FCOM)がある.FSTAモデルにおいては,定数有限状態を持つだけで通信不可であると考える.また,FCOMロボットモデルにおいては,ライトの色を見せることによって他のロボットと直接通信可能となるが,自身のライトの色は見えないため,次のサイクルでは通信内容を忘れてしまう,すなわち,ロボットは通信可能だが無記憶であると考える.それぞれのモデルの計算能力を同期度と合わせて明らかにすることが本研究の目的である.この目的に対して,令和2年度では,持続性メモリと直接的通信が動作スケジュールに対してどのように影響するかを明らかにした.まず全同期(Fsynch)と半同期(Ssynch)におけるこれまでの結果をもとに,Ssynch とFsynchにおける持続性メモリと直接的通信による能力の限界を明らかにした.令和3年度では,これらの結果を拡張し,ロボットが持つ機能を限定しても同様の結果が成り立つことを示した.また,FsynchとSsynchの中間に位置するクラス(Rsynch)と呼ばれるクラスを導入し,Fsynch,Rsynch,Ssynchの相互関係を完全に解明した.また,Rsynchはエネルギーを制限したロボット群の能力と一致することを示し,エネルギーの制限されたロボット群の計算能力を議論できる枠組みを与え,エネルギー無制限のロボット群との能力の差を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の目標は以下のとおりであった.1.FCOMがLUMIと同じ能力をもつ同期度の解明.すなわちSsynchをどこまで制限すれば直接通信のみでLUMIと同じ能力をもつか? 2.FCOMとFSTAの能力差が現れる同期度の解明,すなわち,FCOMがFSTAより真に能力が高くなるスケジューラはどのようなものか? 3.SsynchにおけるFOCMとFSTAの計算限界の解明. 今回の成果によって,RsynchにおいてはLUMIとFOCMが同じ能力を持つことを示し,RsynchはFsynchと同じ構造をしていることを示した.したがって,Rsynchにおいては,FCOMがFSTAよりも真に能力が高いことを示したことになる.Ssynchより弱いスケジューラであるAsynchにおける完全な階層関係までは得られなかったが,AsynchにおけるLUMI,FCOM,FSTAの基本的な関係は明らかにしている.今後,Asynchにおける計算能力を明らかにすることが残されている.
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今後の研究の推進方策 |
令和2,3年度においては,AsynchにおけるLUMI,FCOM,FSTAの間の基本的な関係のみを導出したが,これを発展させ,Asynchの部分クラスであるMove-atomic(Moveが瞬時に行われるモデル)やLC-atomic(Look とCompute が瞬時に行われるモデル)に対して,持続性メモリと直接通信によるこれらモデル間の階層関係を明らかにする.また,基本ロボットモデルにおける記憶,通信,同期度の関係を引き続き解明するとともに,第二段階では,ロボットの故障とロボットの視野制限に対応するようにモデルを拡張したうえで,持続性メモリと直接通信の影響を明らかにする.故障に関しては,一時故障,停止故障やビザンチン故障を考慮する.故障の度合いと視野範囲に対して,記憶,直接的通信,同期度による可解性を明らかにしたうえで,これらのトレードオフを考察する.さらに,他のエージェントモデルにおける計算能力に対する記憶,直接通信,同期度による影響の解明である.自律分散ロボット群に対して,得られた記憶,直接通信,同期度の影響をもとに,生態系モデルであるpopulation protocolやprogrammable mattersにおけるこれらの影響を解明する.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度,令和3年度予定していた研究打ち合わせと成果発表である学会研究会,国際会議がほとんどオンラインとなったため,当初予定していた旅費は使用できず,次年度の研究打ち合わせ,学会研究会,国際会議で旅費を使用するものとする.
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