研究課題/領域番号 |
20K11688
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山田 修司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80331544)
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研究分担者 |
田中 環 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10207110)
齋藤 裕 新潟大学, 教育・学生支援機構, 特任准教授 (50806057)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 数理計画 / 大域的最適化 / DC計画 / KKT条件 / パラメトリック最適化 |
研究実績の概要 |
本研究は,大規模標準DC2次計画問題に対する大域的最適化アルゴリズムの高速化を目的としている。従来,DC計画問題に対しては,凸多面体近似法や強力な局所的最小解探索法であるDCAを導入した反復解法が提案されている。しかしながら,これらの手法は,変数の数や反復回数に依存してアルゴリズムの実行に必要なデータ量が増加するため, 大規模な問題に対しては計算速度が著しく低下することが知られている。このため,本研究では,KKT点列挙アルゴリズムを応用し,変数の数が1000以上の大規模標準DC2次計画問題に対して高速に大域的最適解の近似解を求めることができるアルゴリズムの開発を目指している。また,パラメトリック最適化法,ラグランジュ乗数に対する分枝限定法,及びKKT点列挙アルゴリズムを組み合わせることで,最適値との差が許容誤差内に収まる目的関数値をもつ近似解を求めることができるように,アルゴリズムの計算精度の向上を目指している。 本研究では、対象問題を直接解くことが困難であるため、パラメトリック最適化法を導入し、凸2次最大化問題を逐次的のKKT点を逐次的に列挙することで対象とする問題の大域的最適解の近似解を求めるアルゴリズムの構築を目指している。そこで、これまでに本研究では、逐次的に生成される凸2次計画問題の最適性条件を解析し、KKT点を列挙するアルゴリズムの開発に成功している。また、この研究成果を応用し、分数2次計画問題に対するKKT点列挙アルゴリズムの開発にも成功している。これらの成果は、2021年に開催されるオペレーションズ・リサーチに関する第31回ヨーロッパ会議(2021年7月11-13日、アテネ、ギリシャ)やオペレーションズ・リサーチに関する第22回国際会議(2021年8月23-27日、ソウル、韓国)で発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、対象問題を直接解くことが困難であるため、パラメトリック最適化法を導入し、凸2次最大化問題を逐次的のKKT点を逐次的に列挙することで対象とする問題の大域的最適解の近似解を求めるアルゴリズムの構築を目指している。このため、パラメトリック最適化法に基づいて変換された凸2次最大化問題のKKT点を列挙するアルゴリズムの開発が必要になるが、本研究ではこれまでに、変換された凸2次最大化問題の最適性条件を解析し、1変数の区分的な凸関数で与えられる非線形方程式の解を列挙することで、変換された凸2次最大化問題のKKT点を列挙できることを数学的に証明している。また、この結果に基づくKKT点を列挙するアルゴリズムの開発し、そのアルゴリズムで生成される暫定解列の任意の集積点は変換された凸2次最大化問題のKKT点であることを数学的に証明している。さらに、分数2次計画問題は、パラメトリック最適化法を導入することで、DC2次計画問題に変換できるため、本研究の成果を応用し、分数2次計画問題に対するKKT点列挙法を導入した大域的最適化アルゴリズムを開発し、そのアルゴリズムが大域的収束性を持つことを数学的に証明している。これらの成果は、2021年に開催されるオペレーションズ・リサーチに関する第31回ヨーロッパ会議(2021年7月11-13日、アテネ、ギリシャ)やオペレーションズ・リサーチに関する第22回国際会議(2021年8月23-27日、ソウル、韓国)で発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、第1に大規模DC2次計画問題や分数2次計画問題に対してパラメトリック最適化法とKKT点列挙法に基づいてこれまでに開発した大域的最適化アルゴリズムの計算機実験を行い、その結果を従来法と比較し、その有効性を検証する。開発したアルゴリズムの収束性を向上させるため、パラメトリック最適化法の導入により定義するパラメータを変数とする変換した凸2次最大化問題の最適値関数を解析し、パラメータ更新方法の改善を図る。また、開発したアルゴリズムを計算機上で実行する際に必要となるデータ量を削減するために、DC2次計画問題の制約関数を加重和した関数のヘッセ行列を精度よく逐次的に近似するための手法の開発を行う。これにより、本研究で開発したアルゴリズムを実行する保管しなければならないデータ量を減少させることが可能となり、従来法よりも大規模な問題に対して大域的最適解の近似解を求めることが可能となり、計算速度の向上も期待できる。さらに、これらの研究成果を応用し、捕捉者を伴う捜索ゲームの効用値の計算、有効解集合上での凸関数最小化問題及びDEAにおけるクロス集計効率値の計算に対するアルゴリズムの開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において異なる国際会議で3件の研究発表を行う予定であったが、コロナ禍のため、研究発表を予定していた国際会議が中止や開催時期延長となり、研究発表を実施できず、旅費の支出が発生しなかった。また、開発したアルゴリズムの計算機実験を実施する予定であったが、これもコロナ禍のため、計算機実験のサポートを予定した学生との接触を避けるため、計算機実験を実施できず、謝金等の支出が発生しなかった。
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