研究実績の概要 |
2020年度は, 半正定値計画問題として定式化できるH-infinity制御に集中して二つのことに取り組んだ. (1) 半正定値計画問題として定式化できるH-infinity制御の簡略化を議論した. 特に, 対象となる動的システムから得られるKroneckerの正準型に付随する零点の情報を用いてその半正定値計画問題の簡略ができることを証明した. また, 半正定値計画問題に対する面的縮小法の反復回数である特異度(degree of singularity)とKroneckerの正準型の無限零点の情報が関連していることを明らかにした. (2) 半正定値計画問題の摂動と最適値の連続性を明らかにした. これはH-infinity制御から派生する例題の数値実験の観察に基づく. 主問題あるいは双対問題が狭義実行可能でない場合, 摂動によっては, 最適値が連続的に変化しないことがある. 言い換えれば, 数値計算で生じる数値誤差によって, 得られる解が全く想定しないものになりうるということである. この議論では, どういう摂動であれば, 最適値が連続的に変化するのかを明らかにした. もちろん, 数値計算で生じる数値誤差を摂動と見なした場合, その摂動が, 我々の得られた結果の仮定を満たすかどうかはわからないので, 数値計算ではこの結果は活かせないが, 摂動による議論を数学的に定式化できたという点で興味深い. これらの議論はどれも論文として公開されている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として二つ挙げられる. (1) 半正定値計画問題に対する面的縮小法の反復回数である特異度(degree of singularity)とKroneckerの正準型の無限零点の情報との関係をより明確に記述し, 証明すること. (2) 主問題あるいは双対問題が狭義実行可能でない場合の摂動を議論したが, この議論では, さらにいくつか仮定を課している. これらの仮定を外すことができるかどうか明らかにすること.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍ということもあり, 出張などができなかった. また, 在宅勤務が必要となり, 物品を購入して大学で作業することが難しくなった. これらの理由から, 当初計画した経費の利用ができなかった. なお, 現状では, 既に所有していた計算機や学内で契約している学術雑誌が利用できるため, 研究に支障は生じていない.
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