研究課題/領域番号 |
20K11697
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
室田 一雄 統計数理研究所, 大学統計教員育成センター, 特任教授 (50134466)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 離散凸解析 / 最適化理論 / 数理工学 / 情報基盤 / アルゴリズム / 経済理論 / 情報基礎 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,離散凸解析の双対理論を軸に据えて,離散資源の公平配分問題に関する理論とアルゴリズムを構築することである.この目的に沿って,以下の成果を得た. M凸集合上の辞書式最適化問題の構造を解明する定理を与える論文と,離散変数の辞書式最適基を強多項式時間で求めるアルゴリズムとグラフの連結性問題への応用を示す論文を完成させた.さらに,詳細な文献調査を行い,連続変数の場合と離散変数の場合の比較を行った.これにより,基多面体上の資源公平配分問題に関する理論の全体像が明確となった.離散資源の公平配分問題のより一般的問題設定として,ネットワークフローやM2凸集合(2つのM凸集合の交差集合)がある.これについても研究を進め,予備的な成果が得られた. 離散凸解析に基づいて離散資源の公平配分問題を扱う際に中心的な役割を果たす事実は,離散凸集合上の変数分離凸関数に対する離散双対定理である.既存の成果は,離散凸集合として,M凸集合,L凸集合などを個別に対象とする集合体であったが,本研究においては,整凸関数と分離凸関数に関する離散双対定理を示し,その特殊ケースとして整凸集合上の変数分離凸関数に対する統一的な離散双対定理が得られた.この定理は,離散資源の公平配分問題への応用とは独立に,離散凸解析の根幹を進歩させる重要な成果である. 離散凸解析においては,M凸関数,L凸関数,整凸関数,マルチモジュラ関数など,種々の関数クラスが考察されるが,それらの間の包含関係や,そのうちの2つのクラスの共通部分がどのようなものになるのかを網羅的に整理した.これによって,様々な分野の研究者が離散凸関数の概念を容易に理解できるようになると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,離散凸解析の双対理論を軸に据えて,離散資源の公平配分問題に関する理論とアルゴリズムを構築することである.今年度は,M凸集合上の辞書式最適化問題に関する論文2編を完成することができ,さらに,詳細な文献調査を行い,連続変数の場合と離散変数の場合の比較を行った.これにより,基多面体上の連続と離散の資源公平配分問題に関する理論を確固なものとすることができた.アルゴリズムについても,M凸集合上の辞書式最適化については,ほぼ,網羅的な整理を完了した.今後の展開に向けて,M凸集合上の重み付き辞書式最適化や,ネットワークフローやM2凸集合(2つのM凸集合の交差集合)上への拡張などに着手している.以上のように,進捗はほぼ予定通りで,研究はおおむね順調に進展したと言える.
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今後の研究の推進方策 |
離散資源の公平配分問題の理論については,ネットワークフローやM2凸集合(2つのM凸集合の交差集合)上の配分問題について詳細な理論的検討を行う.また,田村明久氏との共同研究で得られた整凸関数の整数劣勾配に関連する定理や証明手法が,離散凸解析の別の文脈で利用できるかどうかを検討する.これによって,マトロイド性や劣モジュラ性の一般化から出発した離散凸解析の理論において,整凸性,完全双対整数性,完全単模性などに基づく,より深い理解が得られるものと期待している.ソフトウェアの整備については,引き続き,離散凸関数の応用に関する様々なソフトウェアとデモンストレーションをWeb上に整備する. これらの研究の遂行のために,以下の方々に引き続き協力研究者として協力を仰ぐ予定である:種々の資源配分問題のアルゴリズムの開発に関してAndras Frank氏(ハンガリー,エトヴェシュ大学),整凸性の解明に関して田村明久氏(慶応義塾大学),離散凸集合の多面体表現に関して森口聡子氏(東京都立大学),離散凸関数の応用に関するソフトウェアとデモンストレーションの整備に関して土村展之氏(関西学院大学).
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染症の世界的拡大が未だ終息せず,出張の中止が発生し,出張旅費がかからなくなった.また,この影響は国内での共同研究の遂行にも若干の影響を与えた.研究を進めていく上で必要な経費を執行したが,当初の見込み額と執行額に差異が生じた. 次年度に請求する研究費と合わせて,物品費に充てることとし,もし出張が再開できるようになれば国内・外国出張旅費に充当する予定である.
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