研究課題/領域番号 |
20K11699
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
高澤 兼二郎 法政大学, 理工学部, 准教授 (10583859)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ポピュラー有向木 / アルゴリズム |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績のうち代表的なものは,論文「Finding popular branchings in vertex-weighted digraphs」である.Popular branching (ポピュラー有向木) とは,無向グラフにおけるポピュラーマッチングの概念を有向グラフにおける有向木に適用したものである.ポピュラーマッチングとは,古くから知られている安定マッチングを緩和する概念であり,近年盛んに研究が進められている. ポピュラー有向木の応用先には,リキッドデモクラシーとよばれる投票システムがある.リキッドデモクラシーとは間接民主制と直接民主制の中間に位置する投票システムであり,投票者は自分より知識のあるものに投票権を委託するか,自ら投票するかを選択できる.リキッドデモクラシーにおいて,ポピュラー有向木は多数決によって社会的意思を決定する仕組みを表す.Kavitha et al. (2020) は,有向グラフがポピュラー有向木を持つかどうかを判定し,持つ場合はそれを一つ求める多項式時間アルゴリズムを設計した. 本論文では,ポピュラー有向木の概念を,頂点に重みが付随する有向グラフにおける重み付きポピュラー有向木に一般化した.さらに,Kavitha et al. のアルゴリズムを拡張し,重み付きポピュラー有向木が存在するかどうかを判定し,存在する場合はそれを一つ求める多項式時間アルゴリズムを設計した.リキッドデモクラシーにおいては,重み付きポピュラー有向木は,各投票者の投票力に差がある場合に対応する.本論文は,アルゴリズムと計算に関する査読付き国際会議 WALCOM 2022 に採択された. その他の関連研究として,b-有向木や b-双有向木といった有向木の一般化の公平な分割に関する 2 篇の論文が,査読付き国際論文誌において出版された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のとおり,社会的に公平な意思決定・資源配分に関する最適化を取り扱った複数の論文が出版された.いずれも査読付きの国際論文誌・国際会議に採択されており,国際的に評価されている.その他にも,マトロイドやマッチング,正モジュラ関数の最適化に関連する複数の論文が,査読付き国際論文誌において出版された. その一方で,新型コロナウィルス感染拡大の影響で,海外出張を行って国際的な共同研究を進める計画が延期され続けており,想定どおりには進められていない研究トピックもある.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,混雑ゲームの一般化を取り扱う研究トピックなど,社会システム解析のさらに中心的なトピックに取り組む.新型コロナウィルスの感染拡大の状況次第では,海外での国際会議や研究打合せのための出張なども視野に入れている.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響のため,研究打合せのための海外出張をキャンセルした.また,採択された国際会議がオンライン開催となり,こちらも出張の必要がなくなった.以上の理由により,旅費への充当がなくなった. 次年度以降は,新型コロナウィルスの感染状況次第ではあるが,会議・研究打合せ等のための出張の旅費に充当する計画である.
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