研究課題/領域番号 |
20K11700
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
柿沢 佳秀 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (30281778)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 密度推定 / 境界バイアス / ノンパラメトリック |
研究実績の概要 |
『ノンパラメトリックな関数推定』に対して『境界バイアス問題のない非対称カーネル法』を開発し、その体系を整備することに焦点をおき、R2年度においては以下のような成果を得た。 (1)報告者の2018論文では対称分布ベースの逆ガウス及び相反逆ガウスの混合をBS型の拡張と考え、それに基づく「境界バイアス問題のない密度推定法」を考察していた。しかし、もしBS型に限定すれば『対称分布ベースの分布論』から『歪分布ベースのBS化による分布論』へと拡張することが可能である。そこで、(i)非心によるBS化及び(ii)歪分布の典型例であるAzzalini型とtwo-piece型によるBS化のアイデアから、非対称カーネル密度推定量を提案し、漸近的な諸結果を導いた(国際的な専門雑誌Computational Statistics and Data Analysisにアクセプト済み)。 (2)報告者の2020論文では「多変量非心BS分布論」を非積型の非対称カーネルの構築に使用していたが、これは多変量正規分布ベースであったから、さらに『楕円分布ベースの非心BS化』へ進化させ、これから多変量密度推定量を提示し、漸近的な諸結果を導いた。また、その検証として数値実験を実施した。 (3)非対称カーネル密度推定は『非再帰的』に定式化がされており、これを『再帰的』に再考察した。再帰的な非対称カーネル密度推定量ではMISE漸近効率は非再帰推定量に比べて僅かに劣ることが示されたが、定式化は追加データが逐次、利用出来る場合に計算時間の軽減の利点があり、他方、信頼区間を構成するとき、信頼区間長さの期待値は漸近的に短くなる。さらに、積分2乗誤差に関する数値実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)本研究でキーワードとしている「境界バイアス問題のない非対称カーネル密度推定」は、多義的な拡張が着実に進んでいる。特に、歪分布論をベースにしたBS型分布は、スカラーの非負データのみならず、多次元化も容易である。また、本プロジェクトの主テーマである「ノンパラメトリック推論」に留まらず、柔軟なパラメトリックモデルを提示できたから「パラメトリック推論」でも貢献があるだろう。 (2)R2年度内での研究成果は1つは国際的な専門雑誌Computational Statistics and Data Analysisにアクセプト済みで、他にも現在、専門雑誌へ投稿中(1本は改訂版の審査結果待ちにある)。 (3)境界バイアス問題の対処としての「BS型カーネル」が十分に体系化されてきている段階にあると考えており、その他の関数推定問題へ応用したい。
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今後の研究の推進方策 |
(1)非対称カーネル法における平滑化パラメータ及び境界バイアス問題のない導関数推定法の開発を目指す。また、密度関数推定以外の問題へ応用したい。 (2)学会・研究集会・ワークショップに参加・発表し関連領域の最先端の研究動向を掴み、かつ、他研究者と意見交換をして、研究の質を高めていく。 (3)膨大な数値実験を実施することで、数値的傾向から示唆された見地を理論研究へフィードバックさせる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症のため、当初予定していた旅費が未使用となり、物品費も一部、繰り越した(当初のR3年度予算に決定された配分額が少なかったため、繰越額をR3年度の物品費に含めて予算を消化することを考えています)
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