『ノンパラメトリックな関数推定』に対して『境界バイアス問題のない非対称カーネル法』を開発し、その体系を整備することに焦点をおき、R4年度においては以下のような成果を得た。 (1)研究代表者は近年、非負データ(スカラーだけでなく多次元も含む)に対する密度推定に関し、非対称カーネルを用いた推測法の体系化を整備してきた。具体的には、ガンマカーネルのようなカーネル毎の議論ではなく、密度生成機で定式化されるような「Birnbaum・Saunders(BS)型分布族」から可変的カーネル族を構築し、その漸近論に必要な補助的な性質を整備した。 (2)(1)の方針は、密度関数推定に留まらず、密度高階微分の推測にも適用可能であり、実数値データの分布関数・密度高階導関数・分位点関数など当該分野の関連文献を調査して、従来とは異なる、非負データに対するBS型カーネル族を用いた密度高階微分の推定量を提案し、その数学的基礎研究を進めた(成果の一部は、学会で報告した)。 (3)対応する推測問題は、サンプリング状況に応じたバリエーションもある。典型的には、直接サンプリングではなく、いわゆる『レングス・バイアスド・サンプリング』の下での境界バイアス問題の回避された密度推定の漸近論に従事した(成果の一部は、国際会議・研究集会で報告)。 (4)(1)~(3)は、独立同一標本に焦点をおいたが、通常のRosenblatt・Parzen法と同様に、定常時系列の定常密度推定へも拡張可能である(技術的に漸近分散は勿論、相関構造に依存するが、短期記憶過程の場合には主要項に寄与しない)。
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