研究課題/領域番号 |
20K11704
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
熊澤 貴雄 東京大学, 地震研究所, 特任助教 (60649482)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 点過程モデル / 非定常過程 / 余震 / 予測 |
研究実績の概要 |
本研究では余震活動の収拾速度の予測改善を目的とする。このとき注目するのは余震活動の類別化であり、幾つかの顕著な本震・余震型の地震時系列をETASモデルで解析すると,余震の減衰変化は幾つかのパターンに分類できることが分かった。すなわち,(a) 全時間で単一のETASモデルが綺麗に当て嵌る (典型的な余震活動),(b) ある時間以降に減衰トレンドが減速する (相対的活発化) するか加速する (相対的静穏化)、そして (c) ETASモデルの当てはまりの悪い、それ以外のケースに別れる。 この背景として、本震が余震を誘発するメカニズムに二種類の物理的作用が考えられる。一種類目は急激な断層活動による周辺断層群への応力集中であり,(a) や (b) の様に近隣の大きな断層の急激なずれ、またはゆっくりした動き(slow slip)があった時、その応力変化の影響による近隣の活動変化が誘発または抑制される。このような要素が卓越している余震活動では定数パラメータの定常ETASモデルまたは部分的定常ETASモデルが良く適合する。二種類目は大規模地震動による地殻の擾乱や潜在断層のゆっくりすべりによって貫入する流体が原因となる断層系の強度の弱化で顕著となる群発型地震である。これらの総括的なモデル化のために、近年に発生した大地震の本震発生前後の地震活動を統計モデルで解析し、余震活動の収束性や本震に至る地震活動の特徴の解析を継続して行うことで、適用事例を増やして統計モデルの高度化をはかっている。具体的には、2020年4月からの長野県中部群発地震を詳細解析し、その地震時系列の統計学的特徴を地震調査委員会に報告した。また、2011年東北地方太平洋沖地震発生前の関東北部・東北地方広域での地震活動を解析し、その変動を東北地方東方沖のプレート境界におけるスロースリップと関連付けた論文を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個々の地震活動の詳細解析の事例を増やして地震時系列の統計的特徴を掴むことは本研究の重要な課題であり、その方面での進捗状況は順調と言える。特に今年度の研究過程で分かったこととして、これまでの統計モデルで考慮していなかったデータが群発地震を含む地震時系列のモデル化に重要な要素となる可能性が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
地震時系列にETASモデルを適用した際に生じる不一致を補正するモデルとして非定常ETASモデルを提案してきたが、これまで使用していなかった震源メカニズム解の非ダブルカップル成分がこの不一致とある程度の対応が付くことが解ってきた。これらの統計的相関をモデル化し、異常活動を含む地震活動の予測モデルを考察する。F-netのメカニズム解は数が限られるため、特に首都圏においてはMeSO-net観測データの積極的使用を考えている。将来的には非定常ETASモデルを3Dに拡張し、首都圏地下の地震活動変動を構造的に捉える事を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定学会や出張の中止で助成金が余った。 論文出版費用と、可能になれば今年度以降の出張費に充てたい。
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