研究課題/領域番号 |
20K11711
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大西 俊郎 九州大学, 経済学研究院, 教授 (60353413)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | Bayes統計学 / 予測問題 / 事前分布 |
研究実績の概要 |
2つの理論研究を行った.1つは,Bays予測問題に関するもので,RISMによる研究集会「ベイズ法と統計的推測」において「α-ダイバージェンス損失の下での予測問題における調和関数型事前分布の役割」として発表した.確率分布に含まれる未知パラメータを推定するのが推定問題であり,分布の関数形を含めて確率分布を推定するのが予測問題である.Bayes予測問題ではこれをBayes統計学の枠組みで捉える.調和関数は力学や電磁気学など物理学で重要な役割を果たしている.これをBayes統計学における事前分布として仮定する意味を考察した.全確率が1にならないため,通常の事前分布とは異なり,improperな事前分布と呼ばれる.この事前分布が果たす役割を明らかにした.具体的には,improperな一様事前分布に「摂動」として調和関数型事前分布を入れると,頻度主義の意味で予測が改善されるという結果を得た. もう1つは,Bayes統計学における事前分布に関するものである.2021年に出版された論文「A characterization of Jeffreys' prior with its implications to likelihood inference」の発展形である.Jeffreys' priorは代表的な無情報量事前分布であり,データ解析者がパラメータに関する情報を持っていないときに用いられる.この研究では,対象とする標本分布を指数型分布族とし,共役事前分布の一部としてJeffreys' priorを用いることの意味を考察した.指数型分布族は正規分布,ガンマ分布,2項分布およびポアソン分布などを含む応用上非常に重要な分布族(=分布の集合)である.また,共役事前分布をもつという理論的にも非常にきれいな性質を持っている.共役事前分布とは,事前分布と事後分布が同一の関数形になる事前分布である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学務繁忙のため十分な研究時間をとることができなかった.2020年度および2021年度にそれぞれ所属学部・大学院の入試関係および教務関係の責任者になったため,新型コロナウィルス感染症対策にかなりの時間をとられてしまった.
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度と2021年度は学務繁忙のため研究が思うように進捗しなかったが,サバティカル休暇を取得する2022年度には研究に専念し,遅れた部分を取り戻したい.理論研究では,α-ダイバージェンス損失の下でのStein現象に取り組み,応用研究ではTweedie分布におけるBayes解析に注力する.新型コロナウィルス感染症が終息する場合は,共同研究者とface-to-faceで議論する予定である.終息しない場合はオンライン・ミーティング・ツールなどを活用してアイデア交換を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年度および2021年度は新型コロナウィルス感染症のパンデミックにより,国内・外国出張ができなかったため,旅費の部分は先送りした.可能ならば2022年度に外国出張を行いたいが,難しいようならば2023年度に行う.
|