研究課題
高次元データ解析において、平均ベクトルの同等性検定のための検定統計量の近似分布として正規分布が利用される。高次元における検定理論では、このような正規近似が主流であり、次元が1,000~10,000程度であれば実用上十分な精度を有することが既に明らかにされている。一方で、次元が10~500程度(中程度)の場合は、高次元統計解析における検定統計量の実際の分布は、正規分布に比べて歪みをもつため正規近似の近似精度が極端に悪化するという問題がある。本研究では、検定統計量へ適当な変換を施すことで、標本分布の歪みを緩和させることを目的とした。研究課題(A)「 平均ベクトルの同等性検定における検定統計量を改良し、それを利用した検定を提案することを目的とする。」について、正規化変換を導出し、それが分布の歪みを補正する近似になっていること、従来の正規近似を収束レートの意味で改善していることを理論的に示した。さらに、漸近検出力関数を導出し、数値シミュレーションによる有限次元・有限標本における理論的結果の精度検証を行った。これらの結果は学術誌へ投稿中である。また、研究課題(B)「多変量分散分析における検定統計量の近似分布を改良し、それを利用した検定を提案すること」に関して、高次元における2元配置分散分析法を提案した。この結果は、学術誌へ掲載が決定した。さらに、研究課題(C)「(A)で導出した結果を応用した多変量多重比較法を提案すること」に関して、研究課題(A)を応用した方法を提案した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、研究が進んでいる。また、「一般化分散に関する検定」、「高次元ランダムベクトルの独立性の検定」、「ユークリッド判別分析における変数選択問題」に関する結果も得られた。
研究課題(B)「多変量分散分析における検定統計量の近似分布を改良し、それを利用した検定を提案すること」に関して、(A)を応用した手法を提案し、漸近検出力関数を導出し、数値シミュレーションによる有限次元・有限標本における理論的結果の精度検証を行う。研究課題(A)について、共分散構造によっては、そもそも極限分布が正規分布でない場合があることがわかった。そこで、このような場合の理論的な考察を行い、適切な対処を考える。研究課題(C)「(A)で導出した結果を応用した多変量多重比較法を提案すること」に関して、シミュレーションなどの数値的検証を行う。
コロナウイルスの感染拡大防止のため、参加を予定していた学会や研究打ち合わせが、すべてオンライン開催となったため、計画通りに旅費を執行できなかった。これらの費用は、2021年度の旅費へあてる予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
Journal of Multivariate Analysis
巻: 184 ページ: 104756~104756
10.1016/j.jmva.2021.104756
巻: 179 ページ: 104625~104625
10.1016/j.jmva.2020.104625
巻: 178 ページ: 104627~104627
10.1016/j.jmva.2020.104627
Statistics & Probability Letters
巻: 157 ページ: 108637~108637
10.1016/j.spl.2019.108637