研究課題/領域番号 |
20K11717
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
寒水 孝司 東京理科大学, 工学部情報工学科, 教授 (80408723)
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研究分担者 |
五所 正彦 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70701019)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 医薬品開発 / 臨床試験 / 3群比較試験 / 事象時間データ / 既存データ / 2段階試験 / 試験期間 / 多重性 |
研究実績の概要 |
本研究では,臨床試験の効率化と迅速化を達成するために,3つの研究課題を設定している.本年度の各課題の研究実績の概要は次の通りである. 課題(1) 3群比較臨床試験における2段階試験デザインとデータ解析法:応答変数が連続量の場合について,3群比較臨床試験の枠組みで優越性検定と非劣性検定を段階的に実施する2段階試験デザインを構築して,研究成果を学術雑誌に投稿した.査読の結果を踏まえて,試験デザインの改良の方針を検討した.2段階試験デザインを応答変数が事象時間データの場合に拡張して,その動作特性を評価した.さらに,2群比較臨床試験のもとで,Sequential parallel comparison designにおける部分集団の応答変数が歪正規分布に従うことを考慮した検定法を構築した.得られた成果を学術雑誌に投稿した. 課題(2) 事象時間データを主解析とする臨床試験の試験期間とそのばらつきを評価する方法:試験期間の確率密度関数を導出し,試験の実施途中の情報を使用して,試験期間の確率密度関数を更新する方法を構築した.研究成果は2021年1月に学術雑誌に採択された(Machida R. Fujii Y. Sozu T. Statistics in Medicine). 課題(3) 既存データを利用する臨床試験のデザインとデータ解析法:複数の既存データが存在する状況を想定し,高次元データにおける縮小推定で用いられるhorseshoe priorに基づいた群間比較のための解析法を提案した.得られた成果を学術雑誌に投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標をほぼ達成できた.初年度は情報収集と基礎的な検討を予定していたが,採択済み論文1報,投稿中の論文2報という成果が得られた.課題(1)については,Sequential parallel comparison designにおけるデータ解析法の構築を研究課題に加えたことで,投稿済み論文1報という成果が得られた.これより,課題(1)の進捗は当初の予定を上回った.課題(2)については,採択済み論文が1報あるが,本研究課題の採択前に投稿した論文を本研究課題の内容を踏まえて査読に対応したものである.これより,課題(2)の進捗は当初の予定通りである.課題(3)については,投稿済み論文1報という成果が得られた.これより,本課題(3)の進捗は当初の予定を上回った.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえて,各課題について,次のように研究を進める予定である.課題(1)については,査読の結果を踏まえて,応答変数が連続量の場合について,提案した2段階試験デザインが既存の中間解析を伴う適応的試験の枠組みに含まれるかどうかを検討する.その上で両者に違いがあるならば,その違いを定量的に明らかにする. 課題(2)については,近年,主要評価変数(以下,主要変数)だけでなく(主要変数と関連する)副次評価変数(以下,副次変数)の情報を使用して,試験期間の予測性能を向上させる方法が構築されている(Wang et. al., 2015, Mu and Xu, 2017).このとき,イベントの種類やその発生過程に応じて,主要変数と副次変数の関連が定式化されている(Fleischer, 2012, Sugimoto, 2017)が試験期間の予測に与える影響の評価は十分ではない.さらに,先行研究では,副次変数が事象時間データの場合を想定しているため適用範囲が限定される.次年度では,これらの課題に取り組む. 課題(3)については,既存データでも個人データを利用できる場合を想定し,Han et. al. (2017)を参考にして,両データの背景因子の分布の違いを調整できるように提案したデータ解析法を拡張し,その動作特性を評価する. 本年度に引き続き,研究課題ごとに,卒研配属学生・大学院生を1名以上割り当てて,研究代表者と連携して研究を進める.さらに,分担研究者,国内・海外の研究者との連携を図る.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により当初予定していた国内出張と外国出張が中止になり旅費が予定額を大幅に下回った.今後は計算機PCの購入や論文投稿・掲載費用として計上する.
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