研究課題/領域番号 |
20K11722
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
野村 俊一 統計数理研究所, モデリング研究系, 助教 (70719640)
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研究分担者 |
田中 昌之 気象庁気象研究所, 地震津波研究部, 主任研究官 (10742728)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 繰り返し地震 / 地震予測 / 更新過程 / 非定常点過程 / 大森・宇津の法則 / 東北地方太平洋沖地震 / Brownian Passage Time分布 / 相対的蓄積率 |
研究実績の概要 |
数年周期で繰り返される中規模の繰り返し地震について,周辺域の大地震による余震誘発効果を考慮した非定常更新過程モデルによる予測手法を提案した.提案モデルでは,定常な更新過程を時間変換することで得られる非定常更新過程(trend renewal process)をベースとし,その時間変化率(相対的蓄積率)の推移を,定数項と大地震による余震誘発効果(大森・宇津の法則)の和として表現した.さらに,大森・宇津の法則にしたがって将来にわたる時間変化率を予測することにより,繰り返し地震系列ごとに将来の地震発生確率を評価する手法を開発した. 提案手法の適用対象として,震源が東北地方太平洋沖のプレート境界付近に位置しており,かつ,2011年東北地方太平洋沖地震の前後で地震の繰り返しが観測されている5つの繰り返し地震系列について,2019年末までの各系列における繰り返し地震の活動履歴が地震波形記録に基づいて研究分担者により特定された. 上記の系列の繰り返し地震に対して提案手法を適用し,系列ごとの発生間隔分布(Brownian Passage Time分布)のパラメータと,2011年東北地方太平洋沖地震の影響による相対的蓄積率の変化をそれぞれ推定した上で,将来1年間および将来3年間にわたる系列ごとの地震発生確率を算出した.特に,震源位置が近く特定されている繰り返し回数の少ない系列に対しては,発生間隔分布の一部(ばらつき)のパラメータおよび相対的蓄積率の推移(大森・宇津の法則)のパラメータを共通の値として推定することにより,推定精度の安定を図った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究計画のうち,余震誘発効果を考慮した非定常更新過程による繰り返し地震予測については予定通りに進捗しているが,もう一つの非定常時空間ETASモデルの開発とスロースリップの検出方法の検討についてはほとんど進展が無い状況にある.理由は,新型コロナウイルスの感染拡大による授業を始めとした各種業務のオンライン化への対応に追われて研究へ十分な時間を割けなかったためである.
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今後の研究の推進方策 |
今年度に開発した繰り返し地震の予測モデルについて,巨大地震による余震誘発効果に加えて,近隣の比較的大規模な地震や,広範囲にわたるスロースリップの影響を相対的蓄積率の推移に加味したモデルへと拡張する.また,研究分担者が実施している繰り返し地震予測に本研究による予測を加えて比較することにより,提案モデルの予測性能を検証する. また,今年度に進めることのできなかった非定常時空間ETASモデルの開発については,空間ETASモデルをバックグラウンド強度がスプライン関数もしくはデロネー四面体分割による区分線形関数によって時空間変化するよう拡張したモデルを開発し,平滑化罰則項付き対数尤度に基づいて国内のバックグラウンド強度の推移を推定する.さらに,過去の研究で特定されているスロースリップの発生期間・発生領域において,推定された時空間のバックグラウンド強度関数がどのように推移しているかを明らかにし,その共通項から地震活動に基づくスロースリップの検出規準を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大およびそのまん延防止を理由として,学会発表のための出張が相次いで中止となったため.
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