研究課題/領域番号 |
20K11726
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
横田 隆史 宇都宮大学, 工学部, 教授 (90334078)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 相互結合網 / 並列計算機 / スケジューリング / 遺伝的アルゴリズム |
研究実績の概要 |
現実の並列計算応用では、ランダムな通信パターンが継続的に行われる状況よりも、ある一定の通信パターンに従った集合通信(collective communication)を1セットとして、それが複数回行われる状況を想定するほうが適当と考えられる。つまり、並列計算が進行していくとき、計算→集合通信→計算→集合通信→・・・の繰り返しがなされるものと想定するのが適当である。本課題では、このような並列処理実行過程において、通信の実効的な性能を向上させることで、全体の並列処理性能を向上につなげることを目的としている。 今年度は、前年度の実施内容の結果をもとにして、さらに系統的に検討し、実験評価を行い、具体的な方式の提案をする水準に達するまで進めた。 まず、前年度に発案した「スロット・スケジューリング」の概念を発展させた。前年度は単発の集合通信を念頭に置いた検討を行ったが、1回あたりの通信量が多くなり、したがって個々のパケットが長くなると、パケット間の相互干渉の度合いが増し、結果として精緻な制御を行いづらくなることが明らかになった。そこで元のパケットを分割して1つあたりの分量を小さくすると、分割後のパケットの相互干渉を起こしづらくする解を得られることを発見した。パケットには、通常、目的のデータのほか転送制御の情報が付加されるため、分割により転送すべき総量は増す。このため、従来の常識では相互結合網での転送性能を低下させると考えられてきたが、今年度の研究により、分割後のパケットを分散させ、これらの相互干渉を削減することで、性能向上が可能なことを示すことができた。 これらの検討結果をまとめ、新たな「cup-stacking method」(カップ重ね合わせ法)として、電子情報通信学会英文論文誌に投稿し、採録された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の柱のひとつである静的アプローチについて、前年度の成果をさらに発展させ、従来の常識を覆すほどの事実を発見・証明し、さらに従来にない手法の提案を行うまで達成した。手法をまとめ、電子情報通信学会英文論文誌に投稿し、採録された。
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今後の研究の推進方策 |
上述のとおり本年度に新奇な発想に基づく手法を提案し論文採録まで達成したが、これはまだ基本的な手法にしか過ぎない。本年度の後半に、さらに効率を改善し性能向上を実現できると考えられる手法を考案しており、一部、シミュレーションによる実験評価を進めている状況である。まずは、発展的手法としてまとめ、論文化を目指す。 さらに、提案手法の実用化を考えたときに重要となる、頑強性、つまり実環境にどこまで耐えられるか、に関して検討・実験を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額であるため物品や消耗品等の購入に充てることができなかった。
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