研究課題/領域番号 |
20K11733
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
市川 周一 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70262855)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 再構成可能論理 / FPGA / 難読化 / 組込みシステム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,(1) 組込み・制御ソフトウェアをCPU+PL構成上で実装し動作させる方法を確立すること,(2) 実装コストを含めた定量指標によりPL部に実装する部分を自動で選択すること,(3) 知財保護のため攻撃者による解析や剽窃を防ぐ技術を導入すること,の3点である. 目的(1)については,2020年度に学術論文1編(荻堂ほか2021)が採択・掲載された.この論文では,CPU+PL構成をもつSoC (System-on-Chip)製品Xilinx Zynq-7000を用いた耐故障化手法について発表している.適用対象には耐故障(高信頼性)を選んでいるが,動的部分再構成によりCPU側からPL部をプログラムするという手段は,本研究の実装基盤としてそのまま利用可能である.また本研究で得られた再構成時間などの実測値は,目的(2)で定量指標を確立するための基礎データとなる.その意味でも重要な進歩である. 目的(3)については,従来からハードウェア難読化について研究を進めてきたが,2020年度は国際会議論文1編 (Yamada, Ichikawa 2020) が採択された.この論文は,知財保護に難読化手法を用いた場合の「難読化の度合い」を各種の指標で定量化しようとするものである.この研究の成果も,目的(2)において定量指標を確立するための基盤の一つとなる. そのほか,2020年度は乱数生成方式について学術論文が1編,採択・掲載された.この論文は,組込みシステムにおいて実質的に予測不能な乱数(Unpredictable Random Number)を生成する手法について実装・評価したものである.本論文は研究目的(1)~(3)に直接貢献するものではないが,本論文の成果はCPU+PL構成で自然に実現できるものとなっており,その意味で間接的に本助成テーマに貢献する成果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で示した通り,2020年度は学術論文2本と国際会議1本が発表されており,研究は概ね順調に進んだといえる.しかしながら2020年度は,コロナウイルス流行により大学での研究活動が制約を受けたため,研究協力者(指導学生)の作業が十分に進んだとは言えない状況である.そのため2021年度は研究成果に影響が発生する見込みである. 研究目的(1)については,Zync-7000における実装と評価が行われ,結果が論文として発表された.しかしプログラマブルロジック製品の進歩は速いため,今後も随時,新しいプラットホームの導入と評価を進める必要がある. 研究目的(2)については基礎データを集めている段階で,まだ具体的な成果を出すまでに至っていない.これまでも応用ソフトウェアの一部を高位合成してプロセッサ内部に(専用回路・専用命令として)実装する研究を進めており,その成果をCPU+PL構成に移植することで,研究目的(2)の評価基盤が整備できると考えていた.しかしながら,コロナウイルスによる作業時間不足や技術的問題により,2020年度内に成果としてまとめることができなかった.これについては2021年度も研究を続ける予定である. 研究目的(3)については,2020年度までにハードウェア難読化手法の提案(山田ら2019)と,難読化指標の検討を終えている.難読化指標については,国際会議発表後の進展を含めて,学術論文として投稿準備中である.
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今後の研究の推進方策 |
研究目的(1)については,いちおう実装評価まで進んでいるので,機種更新への対応など除き作業の優先順位を下げる予定である.その分の人員と時間を研究目的(2)と(3)へ振り向けて,そちらの推進を優先する.研究目的(2),(3)がある程度進めば,目的(1)~(3)を結合・統合する段階になるので,その時は改めて実装基盤(目的(1))の見直しをする. 研究目的(2)については,進捗状況の欄でも書いた通り,専用プロセッサの高位合成の研究を優先して推進する.その研究の評価基盤が確立すれば,それを利用して研究目的(2)の「定量評価」と「自動選択」を研究することができる. 研究目的(3)については,2020年度に修士論文(山田2021)が完成しており,まずそれを学術論文化する.この論文では高位合成にオープンソースのLegUp 4.0を用いているが,LegUpは商用化を経てMicroChip Technologyに買収されたため(2020年10月)今後の利用が難しくなった.そのため,ハードウェア難読化の処理手順を再構築する必要に迫られている.2021年度は幾つかの高位合成システムを試用・評価するとともに,より良いハードウェア難読化処理手順を模索する. 2020年度には,ハードウェアIP保護手法の一つであるLogic Lockingについて,試験的評価を行った.2021年度も,目的(3)のために,ハードウェア難読化とともにLogic Lockingについても引き続き研究を進めてゆく.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス流行により学内での作業が制約される状況下,実機による実験・評価より,シミュレーションによる評価を優先して実行した結果,設備備品や消耗品の購入が順延されている状況である.また研究代表者(教員)および研究協力者(指導学生)の国際会議参加費および国内会議参加費,それに伴う旅費などが執行されなかった.これについては,次年度以降に国内外の事情が許せば積極的に執行してゆく予定である.
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