研究課題/領域番号 |
20K11736
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
宮瀬 紘平 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (30452824)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | LSIの消費電力 / LSIテスト / LSI設計 |
研究実績の概要 |
本研究では、様々な機能を集積するSoC (System-on-a-Chip) の設計段階で、高速かつ高精度に消費電力を解析する技術の研究開発を実施している。一般的に、精度の高い消費電力解析は処理時間が長くなり高速化が重要となる。精度が低いと製造したSoCの消費電力が高くなる場合や発熱を引き起こすなどSoCの品質保証が困難となるため、精度と処理時間のバランスが重要となる。 本研究の目的は、SoC設計時に繰り返し使用される消費電力解析技術を高速化および高精度化することであり、SoCの設計期間短縮に貢献することを目的とする。2021年度は、論理回路部の論理情報を用いた信号値遷移確率と論理ゲートの位置情報を組合せた高消費電力エリア特定技術の改善と、高消費電力エリア特定技術の評価に取り組んだ。 2020年度の研究では、論理回路部の論理情報を用いた信号値遷移確率と論理ゲートの位置情報を組合せた高消費電力エリア特定技術において、遷移確率の計算対象論理ゲート数を増やすことで、高消費電力エリアの特定精度が高まることが分かった。2021年度は、どの程度の論理ゲート数を信号値遷移確率で対象とすると良いかを、効果と効率の観点で評価した。 2020年度での高消費電力エリア特定技術の評価は、任意の入力に対する消費電力解析を実施するためのスクリプトが未整備であり、ランダム入力に対する消費電力解析結果を用いていた。2021年度は任意の入力に対する消費電力解析のためのスクリプトを整備し、LSIテストで用いる入力パターンに対する消費電力解析結果を用いて提案手法の評価を実施可能とした。実験で用いた2回路に対しては、入力パターンが異なっても同様の消費電力解析結果が得られたのに対して、ある1回路に対しては入力パターンが異なると、ある特定の部分回路の消費電力が高くなったり低くなったりすることを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の進捗状況はおおむね順調である。研究成果は、査読付き国際ワークショップ1件、および国内研究会1件で発表しており、2022年5月現在、査読付き国際会議に1件投稿中である。現在までの進捗状況を下記に述べる。 (2021年4月~9月)2020年度の研究では、論理回路部の論理情報を用いた信号値遷移確率と論理ゲートの位置情報を組合せた高消費電力エリア特定技術において、遷移確率の計算対象論理ゲート数を増やすことで、高消費電力エリアの特定精度が高まることが分かった。2021年度は、どの程度の論理ゲート数を信号値遷移確率の対象とすると良いかを効果と効率の観点で評価した。実験の結果、信号値遷移確率を実施するゲートからのゲート段数が4~5である場合が、高消費電力特定効果と処理時間の観点から最適であると考えられる。 (2021年10月~2022年3月)2020年度での高消費電力エリア特定技術の評価は、任意の入力に対する消費電力解析を実施するためのスクリプトが未整備であり、ランダム入力に対する消費電力解析結果を用いていた。2021年度は任意の入力に対する消費電力解析のためのスクリプトを整備し、LSIテストで用いる入力パターンに対する消費電力解析結果を用いて提案手法の評価を実施可能とした。実験で用いた2回路に対しては、入力パターンが異なっても同様の消費電力解析結果が得られたのに対して、ある1回路に対しては入力パターンが異なると、ある特定の部分回路の消費電力が変化することがわかっており、消費電力が高くなる部分回路を確実に特定することが重要となる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本研究は、2021年度に未解決だった問題点、および研究課題を評価する手法の改善を含め下記のように進める。 (2022年4月~10月)信号値遷移確率計算による高消費電力エリア特定技術の改善:2020年度において実験で使用している3つの回路のうちの1つの回路に関しては思うように高消費電力エリアを特定することができていなかった。2021年度においては、高消費電力エリア特定技術の実装の見直し改善することで2020年度より良い高消費電力エリア特定が可能となったが、さらに改善できると考えられる。具体的には信号値遷移確率が高くなるEXORゲートの論理と類似した論理をもつ部分回路を特定することである。そのような部分回路を特定することで、高消費電力エリア特定技術の性能を向上させる。 (2022年10月~2023年3月)メモリ位置と電源配線の強度を考慮した論理部への高消費電力特定技術の適用:メモリエリアを想定したデザインを設計し、高消費電力エリア特定技術を適用する。その際、メモリの面積やその他の電源配線の影響を考慮し、提案手法の評価のための消費電力解析フローを確立する。 (2022年8月~2023年3月)成果の発表:本研究課題における成果を、国内研究会2件程度、査読付きワークショップ1件程度、査読付き国際会議1件程度で研究発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度からのCOVID19によって、国際会議の現地での参加や海外での研究打合せが実施できず、オンラインによる国際会議の参加費もかなりの割引が実施されたため旅費として計上していた予算に残額がある。 2022年度は国際会議への現地参加が可能になるかどうかを見極め、難しいようであれば研究促進のためのPCやワークステーション、遠隔会議用物品費に利用する予定である。
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