研究課題/領域番号 |
20K11765
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
山本 嶺 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (90581538)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | IoT / 負荷分散 / Opportunistic Routing |
研究実績の概要 |
本年度の研究では,主にa. IoT-GWやSSGW周辺端末の負荷増加に伴う信頼性,通信性能低下,b. 非対称リンクの存在を考慮した経路選択について検討を実施した.
a.では,二つの検討を実施した.一つ目の検討では,IoT-GWやSSGW近傍に集中する負荷に対して,従来から検討が行われている空間的負荷分散と別の考えに基づく負荷分散である時間的負荷分散を併用する時空間的負荷分散手法について検討を行った.ここでは,比較的長い周期で変動する通信負荷に対しては空間的負荷分散を適応し,短い周期で変動する負荷やGW主導による負荷分散に空間的負荷分散を利用する方式を提案した. 二つ目の検討では,IoTネットワークを想定した処理負荷の分散についての検討を行い,近年活発な議論が行われているエッジコンピューティングに加え,フォグコンピューティングを導入したネットワークにおいて,その処理負荷に応じた適切なタスク配分方法を実現する手法を提案した.ここでは,各処理端末で各タスクをタスクキューによって管理し,その計算時間見積結果に応じてクラウドへのオフロードやローカルでの処理,他の処理端末へのオフロードを選択可能な方式を提案した.
b.では,初期検討として非対称リンクが存在する一般的なアドホックネットワークにおいてOpportunistic Routingを実現する経路制御手法についての検討を行った.本検討では,各端末間のリンクにおいて到達可能性をフラグによって管理することで,上流方向のトラヒックと下流方向でのトラヒックにおいて別の経路選択メトリックに応じた転送を可能にしている.また,メトリックの収集とフラグの設定が適切に行われた場合,従来のOpportunistic Routingと同様の方式で通信を継続することが可能となるため,過去の方式との親和性を高めることが可能であると想定される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究進捗においては,年度始めにCOVID-19感染症拡大に伴う研究体制の大幅な変更が必要であったため,若干の実施計画変更が必要であったが,研究体制確立後は順調に進展していると考えられる. 一方,投稿予定であった研究会や国際会議が延期や中止になったこともあり,一部の成果発表が実施できていない状態であるが,これは次年度に発表を実施する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究については,本年度の検討結果を踏まえて計画通りに遂行する予定である. まず,本年度検討を実施した負荷分散に関連する検討について,より実用的なネットワーク環境に適応した制御となるように検討を継続する.また,非対称リンクが存在する環境下におけるOpportunistic Routingにおいては,現在実施している検討に加え,変調方式や伝送速度の違い,無線通信規格の違いによる通信性能全体への影響を考慮した広域にわたる通信状況に基づく転送制御となるように新たな検討を実施する予定である. その他,前述のOpportunistic Routingにおける検討と併せて研究計画に記載している通信メディアの変調方式固定化による通信速度低下についても検討を実施する予定である.また,研究課題とは別に実施しているIoTネットワークのセキュリティに関する研究やより広範囲のM2M通信における情報配信技術に関する研究についても本研究課題に組み込むことで様々なネットワーク形態に応じた制御を実現可能であると考えられるため,こちらも併せて検討を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予定していた学会が中止,またはオンライン開催へと変更となったため,旅費の支出が不要となり,残額が生じている.また,購入予定であった一部の機器についても納期遅れや生産体制の変更により年度内に入手できなかった物品があるため,次年度以降に調達をする予定である.
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