本研究課題では,近年急速に普及が進んでいるセンサネットワークやIoTネットワークなどのM2Mネットワークにおいて,有機的なネットワーク構築および利用を実現するための基盤として,複数の通信規格が空間的に混在した際のネットワーク構築,運用に関するアーキテクチャ検討を実施した.本研究課題で実施した項目として,空間的に複数規格が混在する環境における効率的なネットワーク資源利用を実現するための負荷分散手法,異種混合ネットワークにおける各通信規格の通信特性に起因するリンク非対称性,経路非対称性を考慮した経路選択手法,Opportunistic Routingを利用した効率的な適応的経路制御手法について主に検討を行った. 負荷分散手法では,従来主流の方式である空間的負荷分散に加え,単位時間あたりのトラヒック量を抑制することで時間的に負荷分散を実現可能な時間的負荷分散手法を導入し,双方を負荷状況に応じて適切に組み合わせることによって互いの相乗効果による性能改善を図った. 非対称性を考慮した経路制御手法では,従来の経路制御では十分な対応が困難であった非対称経路を利用した双方向通信経路確保のため,各リンクの帯域をメトリックの一つとするOpportunistic Routingをネットワークに適用することで,複数の通信規格が混在し,互いの通信性能が異なる環境であっても効果的に収容トラヒックを増加させることが可能な方式の提案を行った. Opportunistic Routingを利用した経路制御では,従来のOpportunistic Routingで必要であった事前の情報収集フェーズを省略し,定常的な近傍端末確認のみで階層構造をネットワーク内へ適用し,その階層を利用した転送を実現する新たな転送方式を提案した.これにより,異種混合ネットワークにおいても状況に応じた適切な転送経路を動的に選択可能となった.
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