本研究では,行動・環境センシングデータを柔軟に収集して利用できるクラウドセンシング基盤を構築し,その運用によってデータ収集に必要な条件・依頼方法などの知見を蓄積することを目的とする.クラウドセンシング基盤の利用者は,データ収集依頼者と,データ収集協力者に分類される.データ収集依頼者は「なんのために,いつ,どの場所において,どんな種類のセンサデータが必要か」を定義する.データ収集協力者はスマートフォンやスマートウォッチに専用アプリケーションをインストールしておくと,適切な時空間に存在しているデータ収集協力者に対して,センシング要求のプッシュ通知が送られる.ユーザがデータ収集の種類や目的に同意した場合には,その時空間にいる間のセンシングデータをバックグラウンドでロギングし適宜センサデータ管理サーバにアップロードされる.依頼者はアップロードされたセンサデータを適宜利用できるようになる. 本研究が対象とするクラウドセンシング例を以下にあげる.「建物構造を構築するため,昼間の時間帯の,ある建物における,加速度・角速度・気圧データを収集したい」「深夜の騒音公害調査のため,夜間の,公園における,騒音レベルデータを収集したい」. 最終年度となる2023年度は,過去3年間において実装を行ったプラットフォームに関して,実際に複数のシチュエーションにおいてセンサデータ収集と分析の実験を行った. 具体的には,ある建物内におけるエレベータ使用と階段使用の割合を調査したいという目的で加速度・気圧データの収集を行い,実際に得られたセンサデータに基づいて割合の算出が可能であった.また,特定の大学研究室におけるコミュニケーション量を調査したいという目的で音声(音量)と加速度データの収集を行い,時間的に抜けのある個々のセンサデータを複数人分合成することで1日分のコミュニケーション量を調査できた.
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