研究課題/領域番号 |
20K11781
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
西村 俊和 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (00273483)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハンドオーバ / 確率的ペトリネット / 連続時間マルコフ連鎖 |
研究実績の概要 |
無線システムにおける基地局間ハンドオーバについて、確率的ペトリネット(SPN)と連続時間マルコフ連鎖(CTMC)による構築数理モデルの評価を行った。ns3 (network simulator three) のような離散事象ネットワークシミュレータ(DINS)で得られる模擬結果と異なり、数理モデルでは当該システムの各々の状態の恒常的存在確率を求めることによって、特定の模擬初期値や模擬シナリオに依存しない、より理論的に精密な解析が可能であると考えている。各基地局の移動端末収容状態は、離散分散システムとしてSPNでモデル化することができるため、このSPNを全プレース内のトークン数の組み合わせ状態として展開して各々の恒常的存在確率を求めることによって、例えばハンドオーバ先基地局の通信チャネル不足など、特定の無線システム固有問題の発生確率を求めることができる。CTMCは特に各基地局への移動端末新規到着をモデル化するためのものである。 大セル・小セルの入り混じったヘテロジニアスなセル型無線ネットワークにおいて、トランザクション失敗率などのシステム性能とセル間ハンドオーバとの関係を上述数理モデルで構築し、このモデルに適切なパラメタを設定して模擬を行うことにより、トランザクション失敗率に対してセル稼働率が敏感なこと、対してハンドオーバ用閾値が鈍感なことを明らかにした。また、この研究成果を査読付き国際会議にて発表し、関連研究分野研究者と議論した。 今後は無線システムとして現行のLTE (Long Term Evolution) などを対象として、構築したモデルをDINSで得られる結果と比較することによって、作成モデルの正当性を検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症蔓延のため、国際会議など対外発表そのものやそこでの他研究者との対面議論などの重要な機会損失の問題が2021年度になってもいまだに解消しておらず、そのために現在までの進捗状況を「(3) やや遅れている。」と評価している。現在は現地開催への参加と遠隔地参加の双方が可能な国際会議での発表を考えており、できるだけ同疾病流行による影響を小さくしていきたい。 同疾病流行によるそれ以外の直接影響や、学術研究、研究テーマに依存した進捗の遅れは得にない。
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今後の研究の推進方策 |
無線システムにおける基地局間ハンドオーバについて、確率的ペトリネット(SPN)と連続時間マルコフ連鎖(CTMC)による数理モデルの構築を試みた。これにより、より理論的に精密な解析が可能となると予想されるので、離散事象ネットワークシミュレーションとの比較を行って構築数理モデルの正当性の検証を行う。一方、基地局間ハンドオーバは遮蔽物など実世界の様々な影響を避けることはできないので実証実験も重要である。今後は無線LANなどのライセンス不要電波機器などを用いた実証実験環境を整備して、端末主導ハンドオーバに関する研究を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度内での日本国内でのコロナ禍の終息を予見して国際会議など対外発表・研究会参加の参加費・旅費執行を2022年1月以降に留保していたところ、新型コロナウイルス変異株の蔓延によるいわゆる第6波感染拡大など、当時予測不能であったその後の情勢変化のために執行を見送ったものである。現地開催でかつ遠隔参加も可能な国際会議での発表を現在考えているので、2022年度の対外発表に必要な費用の一部として次年度使用額を執行致したい。
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