研究課題
2023年度は移動端末が起動時に地上網と同期する手順を洗い出し、地上網で事前に同期準備することにより、端末主導のハンドオーバを地上網で支援する手法を考案した。この手法は、従来の地上網主導のハンドオーバ手順と異なり、周囲の基地局からCFRA(Contention Free Random Access)同期に必要な資源を事前に要請し、そのRAP(Random Access Preamble)情報を予め移動端末に蓄積することで、移動端末が移動元基地局との通信が途絶えた状況でも端末主導でハンドオーバを実現可能にした。以下の二点が特徴である。・ハンドオーバー失敗リカバリ手順を一からやり直すことなく、周囲基地局から得た同期用情報を基に移動端末が移動先基地局に対して無線区間の回復が可能である。・PON(Passive Optical Network)のような下りデータの同報が容易なメディアで地上網を構成することにより、通信メディアを浪費することなく下り通信を移動先基地局に事前に送信することができ、無線区間の復帰後、直ちに移動端末へ送信できる。CFRA用RAPに加え下りデータの周囲基地局での複製というデータ面での準備の追加により、RAPと下りデータの有無の組み合わせという三段階の柔軟な地上網支援を提案している。過去4年間の研究を通じて、無線システムにおける基地局間ハンドオーバーの数理モデルを構築し、評価した。特に、確率的ペトリネット(SPN)と連続時間マルコフ連鎖(CTMC)を用いたモデルは、無線システムの各状態の恒常的存在確率を求めることで、特定のシミュレーション初期値やシナリオに依存しない理論的に精密な解析を可能にした。また、ヘテロジニアスなセル型無線ネットワークにおけるトランザクション失敗率とセル間ハンドオーバの関係を明らかにし、国際会議での発表を通じて学術界での議論を促進した。
すべて 2024
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)
信学技報 IN2023-99
巻: vol. 123, no. 398, ページ: 201-206
10.23919/SoftCOM52868.2021.9559100