公共交通機関の利用状況から街中の人の動線を解析する際に役立つOD(Origin Destination)データを日々の変化も捉えるべくリアルタイムにかつプライバシーに配慮して生成することを本研究の目的としている。これまで交通系ICカード、無線LANのビーコン、Bluetooth探索応答や車内カメラ映像を解析する手法が提案されてきたが、設備コストの問題で普及しなかったり、トラッキング性能とプライバシー対策のトレードオフの問題があり、単一情報源による解析手法の限界が生じている。本研究では現実的に路線バスに搭載し得るセンサ群のデータ解析結果を複合(センサフュージョン)し、互いの短所を補完し合うことで現実的なコストで高品質にODデータを生成する。 計画は(1)各情報源の特徴調査と追跡試行、(2)センサフュージョンODデータ生成、(3)実証実験の3フェーズに分かれており、本年度はこの第2・第3フェーズに取り組んだ。第2フェーズでは画像+プライバシフリーセンサーから全種センサまでのフュージョンによるODデータ生成手法を検討した。第3フェーズではカメラ映像、加速度データ、乗降者数(乗降カウンタによる高精度推定値)を5ヶ月間蓄積し、第2フェーズで開発した。 評価結果としてはODデータの生成にあたっては画像から得られた検出・追跡結果(YOLOv7+BYTE)が支配的となった。画像以外のセンサ情報は乗降者数の推定精度向上には寄与することは以前より確認できており、ODデータ生成にあたっても補正効果を期待していたが、それよりも画像での検出結果に対する追跡アルゴリズムの性能向上が優っている。
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