2023年度は、実験環境において、OpenFlow スイッチを3台用意し、それぞれを異なるコントローラ(Ryu、OpenDaylight、Trema)に接続し、本提案システムによって統合的に制御できることを示した。各クライアントマシンを各スイッチに接続し、2022年度までに実装した Web ベースの設定画面から各クライアント間の接続を設定し、論理データベースにその設定内容を格納する。論理データベース(論理的な設定情報)と物理データベース(物理的な結線情報)の情報をもとに、自作エンジンが経路情報を計算し、計算された経路情報を中間コードデータベースに格納する。中間コードデータベースには、OpenFlow におけるフローエントリに準ずる情報を格納しており、さまざまなコントローラに対応できるようになっている。中間コードデータベースの制御情報をもとに、変換ドライバが、各コントローラに適した設定情報に変換し、各コントローラで提供されている REST API によって各コントローラへ反映させることで、異なるコントローラに接続されたコントローラ間のパケット転送が確認できた。
研究期間全体として、ネットワーク制御情報をデータベースで一元管理することによってコントローラ間の同期問題を解決するとともに、ネットワーク設定状態の可視化や、異なるコントローラが混在した環境であっても同一の制御機構で制御できることを示した。本研究課題で取り組む予定であった (1)「データベースシステムの構造設計および制御情報の抽象化」および (2)「自律的に動作する機能コンポーネントおよび変換ドライバの開発」についてそれぞれ実現できた。また、自作エンジンの応用例の一つとして、ユーザのトラヒックパターンによる品質確保を目的とした経路制御エンジンを検討し、実運用に向けた具体的な機能コンポーネントについての検討を実施した。
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