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2022 年度 実施状況報告書

鞍点型連立一次方程式に対する階層並列型高速数値解法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K11840
研究機関筑波大学

研究代表者

多田野 寛人  筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (50507845)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード鞍点型連立一次方程式 / 階層並列型数値解法 / ブロッククリロフ部分空間反復法
研究実績の概要

鞍点型と呼ばれる連立一次方程式は,2行2列のブロック行列を係数行列にもつ連立一次方程式であり,同方程式は様々な分野において現れる.係数行列の左上ブロックの行列が良条件であったとしても,右上,左下ブロックの行列の列数,行数が多くなると,クリロフ部分空間反復法の収束性が悪化し,求解が困難となる.
この状況を打破するために,我々は同方程式のブロック構造を用いた数値解法(以下,提案法)を構築した.提案法では同方程式を直接解くのではなく,左上ブロック行列を係数行列とする複数右辺連立一次方程式の求解を介し,その解行列を用いて鞍点型連立一次方程式の解ベクトルを求める.この複数右辺連立一次方程式は,解くべき鞍点型連立一次方程式よりも求解が容易であり,ブロッククリロフ部分空間反復法を適用することで計算時間,反復回数の両面で効率的に求解が可能である.さらに,各右辺ベクトルは互いに依存関係がないことから分割が可能であるため,この性質を利用することで同時求解可能な複数の方程式に分割でき,分割された各方程式も並列に求解できる.よって,提案法は階層型の並列性をもつ.
2022年度は特に,提案法の高速化を行うために,GPUクラスタにおける提案法の並列コード実装,及び性能評価を行った.複数右辺連立一次方程式の右辺ベクトルはMPIを用いて分割され,分割された各方程式は各MPIプロセスで解かれる.本研究では各MPIプロセスにGPUを1台割り当て,GPUで複数右辺連立一次方程式の求解を行った.また,鞍点型連立一次方程式の解ベクトルの計算には小規模連立一次方程式を解く必要があるが,この部分もGPUで計算することで高速化を図った.性能評価は筑波大学計算科学研究センターのスーパーコンピュータ「Cygnus」の計算ノードを最大56ノード利用して行い,GPU版コードはCPU版コードよりも十分高速であることを確認した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度掲げた2022年度の本研究課題の目標は,「鞍点型連立一次方程式の階層並列型数値解法のGPUによる高速化」であった.研究実績の概要でも述べたとおり,2022年度は同方程式に対する並列計算コードのGPU実装を行い,筑波大学計算科学研究センターのスーパーコンピュータ「Cygnus」で性能評価を行った.その結果,GPU版コードはCPU版コードよりも十分高速であることが確認されており,研究が予定通り進んでいることから「おおむね順調に進展している」と判断した.

今後の研究の推進方策

2022年度の研究を通して,鞍点型連立一次方程式の係数行列の右上,左上ブロックの列数,行数が多い場合は,同方程式の解ベクトル計算で必要となる小規模連立一次方程式の求解部分がボトルネックになり得ることが明らかになってきた.提案法の更なる高速化のためにはこの部分をいかに効率よく計算するかが重要になってくる.今後はアルゴリズム面,高性能計算面の両面から検討を行い,提案法の高速化に向けて研究を推進する.

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍の影響により,学会発表等のための旅費が不要であったため,次年度使用額が生じた.この次年度使用額は,2023年度の研究遂行に必要な物品,及び学会発表のための旅費に充てる予定である.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Application and performance evaluation of a method using block structures for saddle point problems appearing in image reconstruction problems2022

    • 著者名/発表者名
      Ishikawa Shota, Tadano Hiroto, Saitoh Ayumu
    • 雑誌名

      JSIAM Letters

      巻: 14 ページ: 115~118

    • DOI

      10.14495/jsiaml.14.115

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 鞍点型連立一次方程式に対する階層並列型数値解法のGPUによる高速化2023

    • 著者名/発表者名
      多田野 寛人
    • 学会等名
      【非線形問題の高性能解法と可視化技術に関する研究会】2022年度第1回研究会
  • [学会発表] 漸化式の可変的グループ化によるBlock GWBiCGSTAB法の性能改善2023

    • 著者名/発表者名
      齋藤 颯人, 多田野 寛人
    • 学会等名
      【非線形問題の高性能解法と可視化技術に関する研究会】2022年度第1回研究会
  • [学会発表] Implementation of a hierarchical parallel solver for saddle point problems on a GPU cluster2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroto Tadano
    • 学会等名
      The 41st JSST Annual International Conference on Simulation Technology (JSST2022)
  • [学会発表] 複数右辺連立一次方程式に対するブロック・グローバル混合型反復法の構築と性能評価2022

    • 著者名/発表者名
      菅沼 夏樹, 多田野 寛人
    • 学会等名
      日本応用数理学会2022年度年会
  • [学会発表] GPUクラスタにおける鞍点型連立一次方程式に対する階層並列型解法の実装と性能評価2022

    • 著者名/発表者名
      多田野 寛人
    • 学会等名
      日本応用数理学会2022年度年会

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公開日: 2023-12-25  

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