研究課題/領域番号 |
20K11847
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
福間 慎治 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (50313565)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 無歪みデータ圧縮 / 可逆符号化 / ロスレス符号化 / 数値シミュレーション / FPGA |
研究実績の概要 |
本研究では数値シミュレーションのための無歪みデータ圧縮法とそのハードウェア実装を研究する.はじめに,数値シミュレーションにおいて標準的な浮動小数点データに対する圧縮アルゴリズムを設計する.次に設計した圧縮器を,アクセラレータおよびストリーミングプロセッサとしてFPGAによりハードウェア実装する.最後に,実装した圧縮器を用いて,数値シミュレーションにおける通信時間の削減やデータ量の削減を検証する.
一般に,データ圧縮はソフトウェアで行われる.しかしながら,ソフトウェアによる実装は計算コストの増大を招き,数値シミュレーション速度の低下につながる.これに対し提案する圧縮器はデータ通信路にハードウェアとして挿入するためこの問題を回避できる.圧縮器により,データ量は~1/2程度に圧縮可能であることから,メモリ,ストレージ,ネットワークからのデータ読み出しに必要な時間を1/2に削減できる.このことは,既設の計算機にアクセラレータやルータを挿入するだけでシミュレーション速度を最大2倍に加速でき,また,既設のストレージ容量を仮想的に2倍に拡大可能である.こうして,既設のシミュレーション計算機資源を大幅に更新することなく低コストで近代化改修できる.
2021年度は圧縮アルゴリズムの改良を行った.2020年度に開発したL1ノルム最小化に基づく予測器は逆行列計算が必要なため計算量が多く,またハードウェア実装には適していない方法であった.そこで,勾配ブースティングとL1単回帰を組み合わせたL1予測器を提案した.提案法は逆行列計算が不要のため,ハードウェア実装に適している.さらに,設計したスライディングウインドウ単回帰器を応用した数値データ勾配の汎用2次元可視化法を提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は,2020年度に開発したL1線形回帰に基づく圧縮アルゴリズムをハードウェア実装向けに改良した.提案法は既存のL1予測器にはない「反復法」ベースの方法である.反復途中解による圧縮率を評価したところ,既存のL1予測器を大幅に上回る性能を達成できることが分かり,画期的な圧縮器の萌芽となりつつある.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従い,数値シミュレーションと圧縮アルゴリズムを組み合わせた評価を行う.さらに,本研究で開発した回帰器は応用範囲が広いため,本課題を越えた領域での活用も目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
半導体不足のため購入予定の電子部品が年度内に納品不可能と判明し発注を断念したためである.次年度に再度発注を計画している.
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