前年度までに実施された研究により,粒子間相互作用力を計算するための変数についての幾何学的相似理論(初年度に開発),転がり抵抗に関するスケーリング則の導出(次年度に開発)を行うことに成功した.これらは全て,球形粒子かつ単分散系(組成が1種類の粒子から成る系)に対する理論であり,検証もそれに限定されたものであった. しかし,産業プロセスで実際に使用されている粉体材料は非球形粒子から成り,異なる組成の粒子混合物である場合が多い.最終年度では,より現実に近い系でのシミュレーションを可能にするために,これらの理論やモデルを非球形粒子かつ多分散系に拡張することを試みた.非球形粒子の表現にはMultisphereモデル(1つの非球形粒子を複数の球集合体として表現するモデル)およびSuperquadricモデル(粒子表面位置を関数により陰的に表現するモデル)の2種類を用い,粗視化モデルの実装を行った. 検証系として,ロッド形状,チップ形状,直方体形状など様々な種類の付着性粒子を用い,粉体特性評価装置,回転ドラム,高速ミキサー,V型ミキサーのシミュレーションを行った.その後,粉体形状が静的および動的安息角に与える影響,粒子形状および混合比がミキサー内粉体速度分布に与える影響,異なる形状を持つ粉体の混合混合特性などを評価した.その結果,粗視化粒子を用いてオリジナル粒子の結果を良好に再現可能であることを示し,提案モデルの妥当性を確認した.
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