研究課題/領域番号 |
20K11853
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
北島 博之 香川大学, 創造工学部, 教授 (90314905)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分岐 / 数理心臓モデル / 一過性EAD |
研究実績の概要 |
本年度は研究目的の一つである下記に焦点を絞り,研究を行った. 1.システム内の収束の遅い変数をパラメータ化することにより,一過性現象に対して分岐解析を行うことができる手法を開発のための調査 心臓数理モデルとしてウサギの心室筋細胞のモデルであるShannonモデルを用いた.同モデルは,イオン電流の発生を2つの部位に分けて導出しているために非常に複雑なシステムとなっていた.手始めに,14種類の各イオン電流について,1つの部位に統合できなか,また不要な状態変数を一定値で置き換えれないか,の調査を行った.具体的には,統合または置き換えにより生じた簡略化モデルが元のシステムの分岐構造を保存できているか否かを調べた.結果として,元のシステムの分岐構造を保存したままで,4つの状態変数を減らすことに成功した.これにより微分方程式を解くスピードアップが約23%上昇した.次にその簡略化したシステムを用いて持続性EAD(EAD: 早期後脱分極)が発生するためのイオン電流を探した.探索には非常に時間が掛かるためにマルチコア(48コア)を持つCPUを用いて並列処理を行うことにより効率的な全探索を行った.結果としてL型カルシウムイオン電流を増加させた場合のみで持続性EADが発生することを明らかにした.更に,L型カルシウムイオン電流を強制的に増加させた場合に,「正常」→「一過性EAD(時間とともにEADが消失)」→「周期的にEADが発生(時間が経過してもEADは消失しない)」→「持続性EAD」の遷移が起こることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システム内の収束の遅い変数をパラメータ化することにより,一過性現象に対して分岐解析を行うことができる手法を開発のための調査のために下記のことを得た.(1)Shannonモデルの不要な変数を消去するなどして簡略化に成功,(2)簡略化モデルを用いて並列処理を用いた全探索を行うことにより持続性EADを発生させるためのイオン電流の特定,(3)特定したイオン電流を増加させることにより,「正常」→「一過性EAD(時間とともにEADが消失)」→「周期的にEADが発生(時間が経過してもEADは消失しない)」→「持続性EAD」の遷移が起こることを確認.これらは研究計画通りに進んでいることより,本研究は順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策:計画通りに順調に推移していることより,令和3年度は遅く変化する状態変数を探し出しそれをパラメータ化したシステムを構築する.そのパラメータと,令和2年度に見出した持続性EADを発生させるL型カルシウムイオン電流を増加させるパラメータ,の2つのパラメータの変化に対するシステムの振舞いを「2パラメータ分岐図」を計算することにより調査する. 並列処理について当初はGPUの使用を考えていたが,1つあたりのセルに対する計算量が莫大になることより,CPUで処理をしたほうが全体のスピードが上がることがわかり,今後はCPUを用いて計算をすることにした.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議の参加費を計上していたが,コロナウィルス感染症対策でオンラインとなったため,次年度に書籍代として使用する.
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