研究課題/領域番号 |
20K11853
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
北島 博之 香川大学, 創造工学部, 教授 (90314905)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心臓数理モデル / 分岐 / 過渡現象 |
研究実績の概要 |
昨年度は,心臓数理モデルとしてウサギの心室筋細胞のモデルであるShannonモデルを用いてL型カルシウムイオン電流を増加させた場合のみで持続性EADが発生することを明らかにした.更に,L型カルシウムイオン電流を強制的に増加させた場合に,「正常」→「一過性EAD(時間とともにEADが消失)」→「周期的にEADが発生(時間が経過してもEADは消失しない)」→「持続性EAD」の遷移が起こることを見出した.本年度は,システム内の収束の遅い変数として細胞内ナトリウムイオン濃度を選び,パラメータ化したシステムの分岐解析を行った.結果として,EADの起こる領域と起こらない領域が接線分岐集合により区切られ,パラメータ化しないシステムにおいて,細胞内ナトリウムイオン濃度の最大・最小値がその領域を超えることにより,EADが起こったり起こらなかったりする現象(上記の「周期的にEADが発生」)が起こる原因を明らかにした.更に,「一過性EAD」がパラメータ化しないシステムにおいて発生する原因として,細胞内ナトリウムイオン濃度の初期値がパラメータ化したシステムにおける接線分岐点よりも小さな値の時に発生することを明らかにした. 通常では,L型カルシウムイオン電流の増加は,膜電位波形の変化を引き起こす.一度,膜電位が変化すると全てのイオン電流に影響を及ぼし,いずれのイオン電流がEADの発生に本質的に重要であるのかが分かりづらい.本研究では,「電流固定法」を提案し,ターゲットとなるイオン電流のみを変化させ,残りのイオン電流は正常な膜電位を発生させる値に固定をした.結果として,L型カルシウムイオン電流の一次的な変化の後,IK1 チャネル(Kir2.1)を流れるイオン電流がEADの発生に重要であることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
システム内の収束の遅い変数をパラメータ化したシステムの2パラメータ分岐図を作成することにより,パラメータ化しないシステムでの一過性現象および周期的にEADありとなしを繰り返す現象の説明ができることを示した.更に,申請書を書く時点では考慮していなかった問題(あるイオン電流のコンダクタンス値が変化すると膜電位に影響を及ぼし,一度,膜電位が変化すると全てのイオン電流に及ぼし,いずれのイオン電流がEADの発生に寄与するのが分かりにくくなる問題)について,「電流固定法」を提案し解析することでEADを引き起こす2次的な要素についても明らかにした.これらは研究計画通りに進んでいることより,本研究は順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
計画通りに順調に推移していることより,令和4年度は数理モデルを替えて同様の説明が可能であるのかを検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
国内会議の旅費と参加費を計上していたが,コロナウィルス感染症対策でオンラインとなったため,次年度に書籍代として使用する.
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