研究実績の概要 |
本研究課題は被積分関数が積分領域内で発散するような内部特異性がある多次元積分の計算アルゴリズム及び高速化について研究を行うことである。被積分関数が端点(端面)に特異性がある場合には、二重指数関数変換を用いることによって、数値積分が精度良く求められることがわかっており、これまで我々が問題として扱ってきた素粒子物理学で出現するファインマンループ積分に適用してきた。ファインマンパラメータ積分の被積分関数の分母のD(一般的にはDの冪乗)には[0,1]区間の積分変数の多項式と運動学パラメータで記述される。運動学パラメータの関係で積分空間内に0点が発生する場合がある。この場合にはregulator ρを入れて1/(D-iρ) のようにして発散を回避する方法が用いる。我々はregulator ρそのものに数値的に値を与え、数値的に積分値I(ρ) を求め、数列の加速法を用いてρ→0 の極限を求めている。D(x_1,x_2,,,x_n )=0 となるのがこの積分空間内の特異性平面である。1次元の場合は、D(x)=0 となる点で、区間分割してそれぞれ区間で二重指数関数変換をして求積することができる。これを多次元空間に拡張するには、特異性平面の解が必要であるが、解析的にその面を求めるのは一般に難しい。このため、特異性平面を見つけつつ、数値積分を行う必要がある。まずは区間を分割していく、各次元 1/2ずつ分割して特異性平面を含むかどうか判定し、含まれていなければその小積分空間での積分値とする。もし特異性平面を含めば、さらに辺を1/2にした積分空間内を計算することにする。この区間均等分割法のアルゴリズムでは、分割する度に演算量が増えるので、プログラムの並列化は必須であり、効率良い最適な方法について研究を行なっている。
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