本研究では、深層学習における異常検知手法として自己符号化器(AE)の汎化現象について解明を試みる。未知の異常データの判定が不確定となるAEの問題を克服するため、少量の異常データを加えて、正常データと異常データの境界を明確に学習する手法を開発した。昨年度の研究では、本手法(AAE)と他の異常検知手法(Deep SAD法)の比較を行い、それぞれの特性と適用性を調査した。AAEは正規分布に異常モデルを適応させる特性があり、適切なモデル構築で高精度な認識が可能であることが明らかとなった。一方、Deep SADは正常モデルを超球に配置し、異常サンプルによって境界を明確にする特性があることが確認された。さらに、実際の異常検知システムへの応用を目指し、ハンダ検査の事例において高い認識性能を達成した。これらの成果は、本研究で開発した異常検知技術の実応用に対する有用性を示すものとなった。 今年度は、実応用を重視した手法の改良と現場適用、性能評価、高速化、小型化を行った。まず、実際の外観検査や異常検知のニーズを把握し、本手法が適用可能な事例を調査した。未知の異常に対する検知は、過検出と見逃しのバランスを保つことが重要である。そのため、学習方法の改善や適切なしきい値の設定方法の研究を行い、最適な学習方法やパラメータチューニング方法、評価方法の確立を行った。また、実用化においては、エッジ端末での動作可能性や高速な実行速度が求められる。そのため、小型で高速なネットワーク設計についても研究を進めた。ここでは、性能の低下を最小限に抑えつつ、ネットワークを圧縮する方法についても検討した。航空機外板検査に本研究成果を応用し、外観検査システムを構築した。このシステムでは、アルミ板の欠陥を高精度に検出することが可能で、低スペックのPCでも高速な検査時間で稼働することを確認した。
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