研究課題/領域番号 |
20K11891
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
内山 英昭 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (90735804)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | IMU / odometry / deep learning |
研究実績の概要 |
水中における6自由度の位置姿勢推定は,ロボット制御や運動推定などの多岐に渡るシステムの基盤技術である.現状では,機器構成の煩雑さ,利用条件の制約,推定精度の低さなどに課題がある.
本年度は,陸上で用いられるIMUオドメトリ技術のTLIOに着目し,水中での6自由度の位置姿勢推定が可能なシステムへと拡張する枠組みを提案した.TLIOは,機械学習に基づく手法であるため,水中でのIMUオドメトリの位置姿勢の真値を計測する必要がある.そこで,水中のIMUデータ計測システムとモーションキャプチャ用マーカを棒状の剛体で固定した治具を作製することで,水上でのマーカ追跡を実現した.さらに,マーカ追跡の結果に対し,水中のIMUデータ計測システムの位置姿勢へと変換することで,水中オドメトリの真値を計測可能なシステムを構築した..この計測データに対してTLIOを適用することで,IMUのフレームレートで水中におけるオドメトリが算出可能となった.
実験では,水中ドローンを用いた水中での動作,手で治具を動かして水中と水上を往来する水面付近での動作に対する精度検証を行った.学習データとテストデータの構築方法によって,精度のばらつきがあるものの,従来困難であった6自由度の運動推定を実現し,本システムの水中用オドメトリシステムとしての有効性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IMUを用いた多様な環境下で動作可能な立体測位技術の確立を目指し,本年度は,水中における6自由度の位置姿勢推定問題に取り組んだ.一般に,水中における6自由度位置姿勢推定は,ソナー等の機器が用いられていた.それに対し,本研究では,IMUのみを用いた最も簡易な構成で位置姿勢推定の構築を行った.
本研究で取り組んでいる機械学習を用いたIMUの位置姿勢推定のために,IMUの時系列データとIMUの動きの対応を表すデータセットの構築が必要である.そこで,水中の動きを水上から計測するための治具を作製した.さらに,複数の動きに関するデータセットを構築した.構築したデータセットに対する実験を通じ,水中での位置姿勢推定が可能であることを示した.さらに,学習用データセットとテスト用データセットの動きの違いによって,精度低下を生じる要因を解析した.
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今後の研究の推進方策 |
高精度なIMUを用いた多様な環境下で動作可能な立体測位技術の確立に向け,精度低下を生じる要因を解析し,様々なIMUに対して汎用的に利用可能な枠組みの構築に取り組む.従来では,非常に大規模なデータセットを構築することで汎化性能を高める取り組みが行われてきた.しかし,これらは,IMUの観測データに生じるバイアスやノイズといった物理現象を明示的に考慮せず,データから暗に考慮する,といった枠組みであった.効率的なデータセットの構築や,データセットの小規模化のためには,IMUの特性や運動力学等の観点から検討し,より効率的な機械学習の枠組みを提案できると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,コロナ禍の状況において,研究会がオンライン開催となったことにより,旅費の支出が生じなかった.来年度において,研究会での発表の際に旅費として利用する.
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