本年度は以下の2つについて取り組みを行った. 1つ目はディープラーニングを用いたIMUのエラー要因のモデリングである.一般に,IMUで観測される加速度や角速度の計測誤差を直接計測することは難しい.そこで,モーションキャプチャー等で計測可能な軌跡と運動学を用いて算出されるIMUの軌跡の差を最小化するための誤差要因をまとめたパラメータを提案し,最適化を用いて高精度なIMUのエラーのモデル化を実現した.特に,運動学を模倣したニューラルネットワークの誤差設計において,各サンプルではなく,ある区間のデータをまとめて最適化することにより,より高精度化を実現した.また,様々な公開データセットを利用した実験を通じ,IMUを用いた軌跡計算においては,角速度の誤差抑制が加速度の誤差抑制よりも重要であることを示した. 2つ目はスマートフォンとIMUを用いた歩行解析技術の開発である.一般に,スマートフォンのカメラを用いて,目の前の人を撮影しながら行う歩行解析は広域の移動においても高精度を保てるが,オクルージョンの発生によって精度が低下する.IMUを用いた歩行解析はオクルージョン等の影響なく精度を一定に保つことが可能であるが,移動距離に応じて精度が低下する.そこで,カルマンフィルタを用いたセンサフュージョンを行うことで,広域における高精度な歩行解析技術を開発した.提案したシステムをスマートフォンのアプリケーションとして実装し,動作検証を行った.
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