質感に重要な役割を果たす光沢と蛍光を有する物体の見えを計測・解析・再現する総合的な技法の確立を目指している.本年度の具体的な研究実績は下記の通りである. ①従来の蛍光研究は人工物に焦点を当ててきたが,蛍光を発する自然物は数多く存在する.今年度は植物からの蛍光発光の推定を検討した.市販カメラを用いて6チャンネルの蛍光分光を推定する二つの撮像系を構築した.一つは米穀物用で,スマホカメラをマルチバンド化して可視域の蛍光発光が検出する.他方は植物の葉用で,モノクロカメラと追加フィルターを使用して,赤色から遠赤色の領域のクロロフィル蛍光を検出する. ②金属物体のように強い光沢面を撮影する際,センサーのダイナミックレンジ制限のため,ピクセル値が飽和してクリップされ,その画像領域の物理情報が失われる. 本研究では,金属物体の飽和した低ダイナミックレンジ (LDR) 画像から高ダイナミックレンジ (HDR) の元画像を再構成する方法を検討した.8 ビット LDR 画像を HDR に直接マッピングするために、ディープ NN法を採用した.まず種々の金属物体を使用してHDR 画像データベースを構築した.各HDR 画像から8 ビット LDR 画像を作成し,HDR画像と LDR画像のすべての対を,ネットワークの学習とテストに使用した. ③カメラ応答に基づく分光反射率推定方法は、モデルベース法とトレーニング (または学習) ベース法の 2 つの手法に分類できる.本研究では,分光反射率の推定精度を向上させるために,モデルベースと学習ベースの2つの方法を組み合わせた新しい手法を考案した.提案法は2段階で構成され, 第 1 段階で分光反射率の最適推定に最も信頼できる候補セットをデータベースから選択する.第 2 段階では、局所的な最適データセットのみに基づいたNNを使用して、最良の反射率を決定する.
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