研究課題/領域番号 |
20K11897
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研究機関 | 名古屋芸術大学 |
研究代表者 |
長江 和哉 名古屋芸術大学, 芸術学部, 准教授 (50440665)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 録音 / 録音技術 / ピアノ / 音色 / 録音教育 / 音楽録音 / マイク配置 / 音響放射特性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①録音を勉強する学生のために「ピアノマイク配置の比較音源」を制作すること ②音楽的に魅力ある音色で収録できるマイク配置を「主観評価実験」により解明することである。
①について、2022年4月、ベルリン芸術大学にて6種類のピアノ(Steinway & Sons D274、Boesendorfer 290等)を48本の全指向性マイクを用い、24ポイントの位置を比較試聴できるように収録した。具体的には、2名のピアニストの演奏で異なる時代の楽曲を7曲ずつを収録した。収録は、研究協力者、 Thorsten Weigelt氏、亀川徹氏、丸井淳史氏とともに、ベルリン芸術大学の学生、東京芸術大学の卒業生とともに実施した。収録後、編集を経て2022年8月、本学Webページで音源を公開した。
②について、収録後に、亀川氏、丸井氏と主観評価実験の方法を検討した。収録したすべてのマイク位置、ピアノ、演奏曲を評価するのは時間的に困難であるため、今回はピアノ1台(Steinway & Sons D274)、演奏者・演奏曲を1曲(バッハ パルティータ第2番)に絞って聴取実験を実施することにした。まず、2022年10月に、ピアノの音の聴取経験を有するサウンドエンジニアやピアニスト、調律師などを対象に評価語と音源の抽出を行なった。その結果「音像が広い-狭い」「明瞭な-明瞭ではない」など9つの評価語と、24のマイク位置の中から音色に比較的違いがあると回答された10のマイク位置を選択した。それらの評価語とマイク位置を用いて、音の印象を複数の形容詞対の評価語を用いて評価を行う「評定尺度法」と、比較する全てのマイク位置の類似度を評価する「一対比較法」をおこなう実験ツールを作成し、2023年3月にベルリン芸術大学とデトモルト音楽大学、4月に本学と東京芸術大学にて計48名に対して実験を実施することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究はベルリンン芸術大学とともに行う国際共同研究であるが、開始年である2020年3月よりコロナ禍となり当初予定していたように研究を進めることかできなかった。しかし、2022年コロナの状況が好転したため2022年4月下旬にベルリン芸術大学ホールて、本来の計画通り収録を行うことができた。また、収録後、比較再生Webページの制作も順調に行うことができ、2022年8月に公開することができた。その後、コロナの状況がさらに好転したため、2023年3月、4月にはベルリン芸術大学とデトモルト音楽大学、名古屋芸術大学、東京芸術大学で計9日間に渡り主観評価実験を行うことができた。今後、研究のスピードを加速させ2023年11月には結果をまとめ発表し、本研究の成果を対外的に発信していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2023年8月を目処に、これまでに行った主観評価実験の結果をまとめ考察を行う。そして、本研究の取り組みと結果を、2023 年11月8日から11日までにドイツ・デュッセルドルフで開催される録音・放送・音響の国際コンベンション、Tonmeistertagung (トーンマイスター コンベンション)で発表する。また、最終的に 本研究の研究報告を2024年度の名古屋芸術大学 研究紀要に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本比較音源の収録はベルリンで行うことととなっていたが、コロナの関係で海外渡航できず、その影響で全ての計画が1年遅れとなっている。今後、主観評価実験を行うための旅費、研究の成果を学会で発表をするための旅費としてこれらの助成金を使用する予定である。
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