研究課題/領域番号 |
20K11899
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
阿部 孝司 近畿大学, 理工学部, 准教授 (90367441)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 類似画像検索 / CBIR / 群化知覚 / 画像認識 / 画像処理 |
研究実績の概要 |
本研究は、画像内に存在する複数の構成要素に対し、複数の構成要素がまとまって一つに見えるという人間の知覚特性(群化知覚)を考慮して画像パターンを認識することで有効的に機能する画像情報検索を実現することである。これまで複数ある群化知覚の主要要因をモデル化し群化パターンを認識する手法を開発し、類似商標検索の性能を高めることを示してきた。本研究では、これまでの成果を更に発展させ、まだモデル化できていない要因を群化領域認識に導入し検索精度を向上させる。そして種々の社会システムに導入し群化領域認識を適用させることで精度を高めることを示す。 本研究の範囲は、(1)図形内の構成要素間の「連続性」「平行性」の群化強度を測定する特徴量の開発、(2)種々の画像解析へ(1)を応用するための技術開発、である。 (1)の連続性特徴量については、人間から得られた図形群化に関するアンケート結果を機械学習に導入し、提案した特徴量の有効性を確認した。平行性特徴量については次年度に具体的に提案できるよういくつかの予備実験を実施した。(2)については、胃X線像解析の前処理にあたる胃壁のひだ模様の抽出において画像処理して生成された線状と点状からなる欠落したひだ模様の修復に適用した。肺X線像を用いたじん肺診断システムにおいて、X線像上に点状陰影として現れる粒状影の認識に(1)の一部を適用させた。 今年度の実績は次のとおりである。1.人間から得られた図形群化に関するアンケート結果を機械学習に導入し、群化要因の「連続性」を測定するモデルを作成した。2.医用画像処理において、画像を用いた胃がん診断、じん肺診断、のそれぞれにおいて、途切れた複数の線状陰影またはまとまった複数の点状陰影の解析に群化領域の認識手法を一部適用し、それらの抽出精度を向上させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究範囲(1)(2)のうち、(1)については「連続性」要因を測定する画像特徴量を提案し、これを用いて高い精度で群化領域を認識できること、既存のものより精度が高くなったことを確認していることから、概ね順調に遂行されたことが伺える。この技術については現在論文を投稿中である。「平行性」要因を測定するモデルについては次年度行う予定であるが、現在までにモデルを提案するための予備実験を行っており、人間からの図形に関するアンケート実験に加え、試作になるモデルをいくつか提案している。(2)については、(1)の手法の一部を医用画像解析へ適用させた。今後、医用画像処理での種々のオブジェクト認識の精度をさらに高めると同時にさまざまな群化パターンを認識できるモデルを開発する予定である。また、群化認識の動画像解析への適用を提案中であり、具体的には魚の魚群行動の解析に応用できるよう検討している。
以上のことから、群化認識技術を種々の画像・映像解析へ適用し、新たな社会システムの提案または改良がなされたことが伺え、一定の成果が出たことが伺える。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、研究範囲(1)の「平行性」要因を測定するモデルを開発する。申請者は以前に何度かモデルを提案したが精度評価の結果、改良が必要であることが分かっている。さらに、これまで提案してきた群化領域認識手法をさまざまな画像パターンに適用し、画像処理や画像認識の精度を上げることを目指す。具体的には、胃X線像を用いた胃萎縮度合いを定量評価するために群化領域の認識技術を適用させる、肺X線像を用いたじん肺診断において、「肺もんり」と呼ばれる血管影がまとまって一領域に現れる陰影を除去するための技術として群化領域の認識技術が適用できないか検討する、CT画像を用いた肝細胞がんの病変部を精度よく抽出するために群化領域の認識技術を適用することを検討する。さらに、魚群映像からさまざまな魚群の行動解析を行う上で群化認識の技術を適用する方法を検討する予定である。これは本研究の研究範囲(2)に該当するものである。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)コロナ渦の影響で、学会や調査のための出張旅費を想定よりも支出できなかった。また、今年度は国際会議への参加を見送り、次年度にまわした。 (使用計画)国際会議への参加費・渡航費、およびジャーナル論文の別刷代に使用する。また、動画解析の研究のため、別途、実験用カメラその他消耗品を購入する予定である。
|