研究課題/領域番号 |
20K11905
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
藤掛 和広 中京大学, 心理学部, 講師 (90508467)
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研究分担者 |
高田 宗樹 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (40398855)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 視線データ / 映像酔い / データサイエンス / 高齢者 |
研究実績の概要 |
高齢ドライバの交通事故の発生率は増加傾向にあることから,高齢ドライバの事故予防に関する研究は多くなされている.それらの高齢ドライバに関する研究では,実車両や一般道での調査やドライビングシミュレータ(以下,DS)の利用がなされている.DS を利用した実験のメリットは「事故やトラブルのリスクが少ない」「状況場面の設定・再現が容易」「実験条件の調整が可能」等が挙げられるものの,デメリットとして「映像酔いの発生」が挙げられる.映像酔いは,乗り物酔い等と同じ動揺病の一種と見なされ,視覚情報に起因する動揺病は視覚性動揺病と分類される.映像酔いの症状として,酔いによるふらつきが発生すると,眼球は視界を傾けない様にする為に,ふらつきとは逆方向に眼球が回旋すること(眼球回旋運動)が知られている. 本研究の目的は,非接触型の視線計測機器によって計測した視線データを用いて映像酔いの評価指標を開発することで,DS 実験の負担軽減を実現し,さらに映像酔いの早期発見の手法の確立を目指すものである.また,非接触型の視線計測機器を利用することで,自動運転車両のドライバモニタへの技術転用などの発展も期待される.本研究で開発する映像酔いの評価指標は,データサイエンスのアルゴリズムによってDS実験時の視線データに含まれる眼球回旋運動の成分を抽出することで,映像酔いを定量的に評価するものである. 2020年度の研究では,日常生活に支障のない視覚機能及び平衡機能を有する65歳以上の高齢者9名を対象に,視線及び重心動揺のデータ解析を行った.その結果,DS 実験前後の安静時の視線及び重心動揺の定量化指標の比較から,視線データによる評価指標の有効性が示唆された.さらに,DS 実験時の視線データについてデータサイエンスの手法で解析した結果,その手法の有効性も示唆された.詳細は【現在までの進捗状況】に記す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した2020年度の研究計画では,若年者の安静時の視線データから評価指標を開発する予定であった.しかしながら,新型コロナウイルスの蔓延予防のため,2020年度は多人数の実験は延期した.また,新規の実験実施は新型コロナウイルスに罹患するリスクが懸念されることから,これまでに予備実験で取得していた高齢者9名の視線及び重心動揺データの解析を行った.この措置は,申請書で次年度と次々年度に実施する内容の一部を,前倒しで実施したことになる. 2020年度に実施した視線及び重心動揺データの解析結果から,視線データによる映像酔い評価指標が重心動揺による評価指標と同程度であることが示された.さらに,DS 実験時の視線データをDouble-Wayland法という確率過程/カオス過程の判定に優れたデータサイエンスの手法で解析した結果,映像酔いの症状の見られた被験者では視線データの規則性が増大していることが示された.視線データの規則性が増大した要因として,映像酔いによって眼球回旋運動が発生したことで,DS 操作時のランダムな注視行動に不随意的で規則的な成分が増えたからだと考えられる.この結果から,被験者数は多くはないものの,DS 操作時などのリアルタイムでの映像酔いの評価指標として,Double-Wayland法による規則性の判定が有効であることが示唆された. 2020年度の結果は,今後の研究の推進に於いて,多数の若年層及び高齢層の映像酔いの評価指標の有効性の確度が高いことを示す知見といえる.2020年度は若年層のデータ取得はできなかったものの,次年度(2021年度)以降に検証すべき研究計画を進められたことから,全体の進捗としては支障のない状況であるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
申請した次年度(2021年度)との研究計画では,若年層のDS操作時の視線データから,リアルタイムでの映像酔い評価に加え,映像酔いの兆候の早期検出が可能な評価指標の開発を実施する予定であった.しかしながら,既に2020年度の研究にてDS操作時の視線データから有効と考えられる評価指標が示されている.このことから,2021年度の研究計画としては,データサイエンスの手法であるDouble-Wayland法による解析で算出される定量化指標の有効性について,若年層の視線データを対象として検証する.さらに,機械学習の手法の利用によって,映像酔いの兆候を早期に検出する為の評価指標開発を目指す予定である.そして次々年度(2022年度)は,2021年度に得られた研究成果の知見を,高齢層でも有効であるかの検証を実施する. 今後の実験では,新型コロナウイルス感染予防の観点から,「1. 実験実施の実験者は1名とし,参加する被験者も一度につき1名とする」「2. 実験室の滞在時は扉を開放し,窓も開けた状態を維持する」「3. 入室時の手指消毒,マスクの着用を徹底する」「4. 会話をする場合には,可能なかぎりアクリル板越しで実施する」「5. 実験の教示や説明は,予め録音した音声を使用する」「6. 実験終了後,室内にいた人間が触れた箇所は消毒・清掃を実施する」「7. 退室時も手指消毒を徹底する」等の配慮をする.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延予防のため,2020年度は多人数の実験は延期した.また,新規の実験実施は新型コロナウイルスに罹患するリスクが懸念されることから,これまでに予備実験で取得していた高齢者9名の視線及び重心動揺データの解析を行った.そのため,申請した研究計画で購入予定だった実験機材の購入は見合わせている.当該の実験機材は,次年度(2021年度)に購入する計画である.
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