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2022 年度 実施状況報告書

当事者意識を喚起する災害および避難に関する情報提示デザイン

研究課題

研究課題/領域番号 20K11911
研究機関立命館大学

研究代表者

泉 朋子  立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (70551505)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード避難行動支援 / 防災 / 情報デザイン / インタラクション
研究実績の概要

本研究では,災害発生時の避難行動を促すために,情報の受け手に当事者意識を喚起させる情報提示デザインを提案することを目的としている.既存の情報表現の問題点を整理し,端末所持者の周辺環境と状態を考慮した情報提供デザインを検討する.
情報の受け手のスマートフォンに表示する情報を対象とし,スマートフォンに予想される災害,被害の状況をテキストで伝達する場合の情報提示デザインについて検討した.研究では,予想される災害の状況を肯定的な視点からの表現と否定的な視点からの表現で避難意識が異なるかを検証した.検証実験の結果から,予想される被害の程度が大きい場合には否定的な視点,被害の程度が小さい場合には肯定的な視点からの表現が避難意識を高める可能性を示した.本研究成果は学術論文誌で発表を行った.
また,個々人が所有している携帯端末を利用して,携帯端末で取得できる位置情報やセンサ情報を活用して当事者意識を喚起するテキスト表現について検討した.特にGPSから取得できる位置情報とセンサから取得できる所持者の状態情報に焦点を当て,これらの具体性を高めた表現を緊急速報メールに含めることを検討した.その結果,位置情報の具体性を高めることの効果を示した.これらの成果は国内外の研究会で成果を発表している.
さらに,緊急速報メールを模した形式では表現が難しかった情報表現を扱うために,スマートフォンで動作する災害アプリを介した情報提供を検討した.アプリで動作するエージェントを活用することで,ユーザのスマートフォンの操作履歴情報などを用いることができ,かつエージェントから「呼びかける」ような音声による情報提示が可能となる.検証実験の結果,エージェントからの音声による情報提供が災害に対する当事者意識を高める効果があることを示した.本成果は国内の研究会で発表をしている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度の研究活動は非常に順調に遂行できている.特に,個々人が携帯するスマートフォンの特性を生かし,情報の受信者の状態を含む災害情報を伝達することが当事者意識の喚起に有用である可能性を示したことは大きな成果である.
しかし本研究期間の1, 2年目がコロナ禍であったために実験協力者に参加してもらう実験が計画通りには遂行できなかった影響が残っている.特に屋外での実験が必要であると考えられる情報の受け手の周辺環境を考慮した情報提示や,災害状況下での不安感や緊迫感を再現し,提示された情報の解釈のみではなく,その後の避難行動に関する意思決定の過程を分析する取り組みがやや遅れている状況である.

今後の研究の推進方策

これまでに既存の情報提示のデザインと新たに提案した表現について比較検証し,既存の表現の問題点と提案した表現の効果を示した.また今年度には,災害に関する情報表現について肯定的,否定的視点からの表現という観点を導入し,同じ状況を表現する内容であっても視点が異なると災害に対する危機感や災害の捉え方が変わることを示した.また,特にGPSや各種センサ等を利用し携帯端末所持者の位置や状態を把握し,端末所持者の自身の状態情報を利用し当事者意識を喚起する表現を検討しその効果を検証した.
今後は,携帯端末所持者の情報を活用し当事者意識を喚起する研究を発展させる.得られた成果を国内外の学会で報告し専門家からの意見を収集し,さらに研究を進める.特に今年度にも検討したように,テキスト表現だけでなく,それらの情報をどのようなメディアを用いて提供するかも避難意識の向上に影響を与えると考えられる.これまではソフトウェアエージェントという情報の発信元を視覚的に表現する効果やエージェントから「呼びかける」ような音声による情報提供の効果を示してきた.今後はこの手法を発展させ,画像や音声の特徴にも着目し,当事者意識を喚起する情報提供方法について検討する.
また,これまで検討をしてきた内容はGPSから取得できる位置情報と携帯端末に内蔵されているセンサ情報や端末から取得できる操作履歴を活用したものであった.研究計画書に記載している,情報の受け手の周辺環境を考慮した情報提示についての検討が不足しているため,今年度に特に注力する.さらに情報提供後の印象評価だけでなく,災害状況下での不安感や緊迫感を再現し,避難行動に関する意思決定の場をシミュレートするような実験環境での効果検証も進めていく.

次年度使用額が生じた理由

本年度の後半は新型コロナウィルスを原因とする行動規制が行われなかったため,実験協力者が参加する実験が実施でき,また国内の研究会で成果発表をすることができた.ただし,成果を広く発信するために国際学会に投稿し採択されたものの,本年度の前半は海外渡航に対し厳しい水際対策が実施されており,現地に渡航し専門家らと直接意見交換をすることが叶わず,オンライン開催の学会に参加したものの旅費や謝金が余ることとなった.
また,1, 2年目に行動規制が行われたために遂行できなかった影響が残っており,遅延している研究活動に相当する研究費が継続して残っている状況である.
次年度以降は本年度の後半と同様に本格的に研究活動を実施できると考えられる.「8.今後の研究の推進方策」で述べたように,遅延している研究活動も含め,当初計画のとおりに研究内容は遂行する予定である.そのため,検証実験を実施するための実験環境整備にかかる費用や,実験協力者,および実験の補助にあたる研究補助者への謝金が今後必要である.また,成果報告を積極的に行うため,国内外の学会への旅費や,学術論文誌への掲載料が必要となる.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 危険と安全の視点からのテキスト表現が避難意識に与える影響の比較検証2022

    • 著者名/発表者名
      泉 朋子,若園 英里,北村 尊義
    • 雑誌名

      日本感性工学会論文誌

      巻: Vol.21,No.3 ページ: pp.299-308

    • DOI

      10.5057/jjske.TJSKE-D-22-00005

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] エージェントからの音声による災害情報が 当事者意識を喚起する効果の検証2023

    • 著者名/発表者名
      矢野友貴,安藤雅行,大津耕陽,泉朋子
    • 学会等名
      情報処理学会 インタラクション2023
  • [学会発表] 災害時における当事者意識を喚起するテキスト情報表現-閲覧者の位置情報と状態情報に基づく検討-2022

    • 著者名/発表者名
      矢野友貴, 大津耕陽, 泉朋子
    • 学会等名
      第190回ヒューマンインタフェース学会研究会,ヒューマンインタフェース学会
  • [学会発表] Verification of the Effects of Personalized Evacuation Alerts using Behavioral or Location Information with the Sense of Urgency in a Disaster2022

    • 著者名/発表者名
      Tomoki Yano, Kouyou Otsu, Tomoko Izumi
    • 学会等名
      the 13th International Conference on Applied Human Factors and Ergonomics (AHFE 2022) and the Affiliated Conference

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公開日: 2023-12-25  

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