研究課題
装着容易性・快適性を保つばね型ドライ電極を用いて,実環境下による身体運動が伴う脳波計測技術を確立させるため,昨年度中に電極加速度同時計測による電極揺動アーチファクトの低減推定手法を完成させ先行研究手法 (Kilicarslan et al., 2019) との性能比較を試みつつ論文執筆をし始めたが,本研究手法が先行研究手法に比べなぜ優れているかを論じるために,本研究手法の推定で鍵を握る窓長の最尤推定について考察を進めた.ドライ電極装着位置の近くに運動アーチファクトが発生しにくいペースト電極での脳波波形も独立かつ同時に取得した.そして,ドライ電極計測データについては,あえて最尤値より短い窓長及び長い窓長に固定したそれぞれに対して,脳波電極揺動に対する応答関数の滑らかさを定めるハイパーパラメータを最尤推定させ,それらのハイパーパラメータを用いてアーチファクト低減推定を行い,推定精度を比較した.ペースト電極値との平均事情誤差をみたところ,窓長が長くなるにしたがい小さくなった.しかし,ペースト電極信号との相関係数を求めたところ,最尤窓長の方がより長い窓長の場合よりも有意に大きかった.すなわち,最尤窓長での推定結果の方がペースト電極信号波形に類似していた.この結果は,最尤窓長より長い窓長で推定すると過剰適合を引き起こしており,真の脳波成分をも低減させてしまったことを示唆する.このように,ベイズ推定に基づいた窓長推定の意義及び効果を体系的に示すことができた.
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電子情報通信学会技術研究報告
巻: vol. 122, no. 66, CCS2022-24 ページ: 123-128