研究課題/領域番号 |
20K11914
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
山東 悠介 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (30463293)
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研究分担者 |
佐藤 和郎 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主幹研究員 (30315163)
宮島 健 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 研究員 (10847916)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 計算機ホログラム / 円錐形HOE / 大型HOE / 高速計算 |
研究実績の概要 |
本研究は、自然な立体像を表示可能なホログラフィを用いることで、特殊な眼鏡が不要で、高い臨場感を有する立体表示システムの実現を目指している。高い臨場感には、実物大以上の像再生及び表示システム(光学部材)の秘匿化が重要である。これらを実現するため、今年度は、大型ホログラフィック光学素子(HOE)の作製と、立体像を表示するためのホログラム計算の高速化に取り組んだ。具体的には、以下の通りである。 まず、昨年度に引き続き、非平面HOEの作製の一環として、発散球面波を生成する円錐形HOEを用いて立体表示システムを構築した。その結果、水平・垂直方向共に十分な視域を実現することができた。本結果について学術論文に投稿し、掲載された。 次に、分割記録により大型HOEを作製するための記録光学系の予備実験を行った。光学系の対称性の観点から、複数の同じHOEを作製し、一面に並べる手法について取り組んだ。しかし、記録した個々のHOEを剥離して別の基板に継ぎ接ぎして貼り付けると、各HOEの光軸が完全には一致せず、大型HOEとした場合の光学性能(集光特性)が不十分であることが分かった。そのため、大型HOEの記録方法を再検討する必要が生じた。最終的には、2軸の可動回転機構を記録光学系に組み込むことで、剥離処理なしでも比較的容易に分割記録できる装置を設計・試作した。 また、ホログラムの高速計算については、立体像のスパース性を利用した高速フーリエ変換の高速化に取り組んだ。これは、ホログラフィックディスプレイでは、再生する立体像の中身は空洞であることを活かした手法である。数値計算での検証の結果、高速フーリエ変換に要する時間を約40%削減することができ、本結果について、国際会議にて発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、今年度は、大型ホログラフィク光学素子(HOE)の作製、再生光学系の構築、及びホログラムの高速計算の方向性検討であった。大型HOEの作製においては、作製方法を再考する必要が生じたこともあり、予定より若干遅れてはいる。しかし、代替案を考案し、そのための試作機も作製した。再生光学系については、おおよそ完了しており、大型HOEを組み込む段階になっている。高速計算については、立体像のスパース性を活用した手法を新たに考案し、十分に期待できる結果が得られた。さらに、学術論文の投稿や、招待講演を含む学会発表については、予定以上の結果が得られた。これらを勘案して、おおむね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、まず、構築した大型HOE記録装置の性能評価を行い、その上で分割記録による大型HOEの作製に取り組む。サイズは30 cm×20 cmを目標とする。次に作製した大型HOEを、(既に構築してある)時分割方式の再生光学系に組み込む。再生実験では、時分割再生用のホログラム計算を行う。また、視野角と再生可能像空間の大きさも実測する。さらに、実時間再生に向けたホログラム計算の高速化についても引き続き取り組む。具体的には、現在CPU処理で高速化を行っている処理を全てGPUにて置き換え、アルゴリズムとハードウェアの両面からアプローチする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、今年度は、左右の両眼用に再生光学系を2式構築するため、ホログラム表示素子であるDigital Micromirror Device(DMD)を含む光学部材を追加購入する予定であった。しかし、購入予定であったDMDが製造中止となり同価格帯での代替機種がないこと、また、本研究の主目的である大型立体空中浮遊像の再生は、再生光学系1式で原理検証可能であることから、DMD等の追加購入は見送ることとした。一方、時分割方式による像再生では、像にボケが生じる。それを低減するためには、DMDと同期して光源をパルス点灯させる必要があり、そのために追加で高速信号発生器を購入する必要が生じた。今年度の余剰金は、次年度、高速信号発生器を購入するために使用する。
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